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後に闇の書事件と呼ばれる事件が起きてから、しばらく経ったころ、 「はやてちゃんが意識不明!?」 病院からの電話に、シャマルは呆然となる。金髪を肩のあたりで切りそろえた二十歳くらいの女性だ。受話器を落とさなかったのは僥倖だろう。シャマルはどうにか受話器を置くと、その場に崩れ落ちる。 居間にいて声が聞こえたヴィータ、シグナム、ザフィーラも顔色を変える。 「おい、はやてが一体どうしたんだ?」 「突然、病院で昏睡状態に陥って、原因不明だって・・・・・・」 「魔力の不足か」 シグナムが唇を噛み締める。年はシャマルと同じくらい。髪をポニーテールにした凛々しい雰囲気の女性だ。 手にしたものの願いを叶える闇の書。しかし、莫大な魔力を必要とする闇の書は、魔力の収集を行わなかった彼らの主、八神はやてを確実に蝕んでいる。 進行を抑えるべく、シグナムたちは連日、異界に飛んで魔力を収集しているが、はやての容態は悪化する一方だ。このままでは命にかかわる。 「やっぱり、こんなちんたらしたやり方じゃ、間に合わねぇよ!」 ヴィータが苛立ちまぎれに机を叩く。長い髪を二つの三つ編みにして垂らしている、きつい目つきの少女だ。年は六、七歳か。 はやてが悲しまないように、ヴィータたちは相手の命を奪わず、魔力の元、リンカーコアのみを奪取する方法を取ってきた。しかし、その方法も限界に来ていた。 「落ち着け、ヴィータ。主が悲しまないよう最善を尽くす。それが我らの誓いではないか」 床に伏せていた蒼い狼、ザフィーラがヴィータを諭す。 「でも、このままじゃ、はやてが・・・・・・」 「手がないわけじゃないわ」 シャマルが静かに言った。 「どういうことだ? 詳しく聞かせろ」 「この前、時空のはるか彼方に、膨大な魔力反応を感じた。もし、その魔力を手に入れられれば、はやてちゃんを助けられるかもしれない」 「何だよ。そんな方法があるなら早く言えよ」 ヴィータは胸を撫で下ろした。しかし、シャマルの顔は険しいままだ。 「どうした?」 シグナムが促すと、シャマルは重々しく口を開いた。 「簡単に行ける場所じゃない。たぶん往復だけで丸一日かかる。まして、その先にいるのはこれまで観測したこともない魔力の持ち主。全員でなければ、絶対に負ける。いいえ、全員で行っても勝てるかどうか・・・・・・」 先日襲撃した時空管理局の少女たちも、相当な魔力の持ち主だったが、今回はさらに桁が違う。まるで神か悪魔の居場所でも突き止めたかのようだ。 「相手が誰であろうと関係ない」 シグナムが剣型デバイス、レヴァンティンを取り出す。 「主を救えるなら、たとえ神だろうと悪魔だろうと倒してみせる」 全員が力強く頷く。彼らの心に迷いはない。 彼らの名はヴォルケンリッター。闇の書の守護騎士たちだ。 魔力で作られた道具でしかなかった彼らに、人の心と温もりを教えてくれた八神はやて。彼女を救えるなら、どんな罰だって甘んじて受ける。 「決まりだな」 「こうなると、はやてちゃんが昏睡状態なのは不幸中の幸いかもね」 「ああ、余計な心配をかけずにすむ」 「ならば、一刻も早く出発しよう。そして、一刻も早く戻らねば」 ザフィーラが立ち上がった。その姿が、狼の耳と尻尾を生やした浅黒い肌をした男に変わる。 万が一、目を覚ました時のために、石田医師に伝言を頼む。石田医師からは、こんな時にはやての傍からいなくなるなんてと文句を言われたが、仕事の都合でどうしようもないと押し切った。 「では、行くぞ!」 シグナムの号令の元、騎士服に着替えたヴィータ、シャマル、ザフィーラが転移を始める。 その頃、時空監理局所属アースラ艦内では、 「敵が移動を開始した?」 「はい。座標xに向けて移動中です」 「かなりの距離ね」 「もしかしたら、そこに闇の書があるのでは?」 黒衣の少年、クロノが母親であるリンディ艦長に向けて言う。 「その可能性は高いわね。収集した魔力を主の元に届けるつもりかも。そうなると、なのはさんやフェイトの協力は不可欠ね」 アースラは、なのはたちのいる時空に進路を取った。 ヴィータたちが降り立ったのは、月光が降り注ぐ広い草原だった。 ただし、その場所には無数の化け物が巣食っていた。 「おい!」 狒々(ひひ)や牛、草原を埋め尽くす化け物の群れに、ヴィータが思わず声を上げる。 化け物すべてが桁違いの魔力を放出している。たやすく倒せる相手ではない。 「ほう。面白い獲物がかかったものだ」 化け物たちの中心にいる巨大な牛が渋い重低音で言う。魔力の量から、そいつが親玉なのだろう。 牛が吠えると、その姿が変化していく。牛の角はそのままに、体は虎に、背からは巨大な翼が生えてくる。 「おお、窮奇様が……」 「真の姿を現された」 化け物たちがどよめく。 しかし、シグナムたちを驚愕させたのはそこではない。本性を現すやいなや、化け物から凶悪な魔力が放出されたのだ。 「・・・・・・嘘」 シャマルの足から力が抜け、その場に膝をつく。 「まさか、ここまでとは」 シグナムたちも武器を構えているが、顔から血の気が引いている。話には聞いていたが、まるで神か悪魔のような力だ。闇の書以外でこれだけの力を持った存在がいるなど信じられない。 (今の私たちで勝てるか?) 歴戦の勇士である彼らでさえ、いや、だからこそ勝機のなさを自覚せざるをえない。 窮奇と呼ばれた化け物が喉の奥で笑う。 「見たところ、人間ではないな。なかなか強い力を持っている。貴様らを食えば、この傷も少しは癒えるかな?」 窮奇の首には骨まで達する深い裂傷があった。普通ならとっくに死んでいるような大怪我だ。 「手負いでこの力か」 「おもしれぇ! てめえの力、そっくりいただいてやる」 ヴィータが金槌型デバイス、グラーフアイゼンを振り回して突撃する。 「ふん」 魔力の放射だけで、ヴィータは軽々と弾き飛ばされる。それを合図に一斉に化け物たちが襲ってきた。 主はやての為に不殺を貫いてきた彼らだが、これほど邪悪な存在に手加減する理由はない。 無数の化け物たちを、レヴァンティンが切り伏せ、グラーフアイゼンが叩き潰す。それでも倒して切れない相手をザフィーラが退ける。倒した敵からリンカーコアを摘出しながら、シャマルが傷を負った仲間たちを回復していく。 必死に応戦するが、すべてが手練れの上、数も多い。防戦一方だった。 苦戦する守護騎士たちを、窮奇がいやらしい笑みを浮かべて眺めている。その気になればいつでも始末できるのに、シグナムたちが傷つきもがき苦しむさまを楽しんでいるのだ。 その時、 「万魔拱服!」 轟く声と魔力が、シグナムたちを取り囲む化け物たちを一掃する。 「ちっ!」 思いがけない新たな敵の出現に、窮奇や他の配下たちが逃げていく。 「・・・・・・助かった?」 ヴィータがほっと息をつき、ザフィーラが狼の姿に戻る。 「えっと・・・・・・大丈夫?」 声をかけてきたのは、不思議な服を着た少年だった。赤い古めかしい衣に、長い髪を後頭部でまとめている。その肩には、白いウサギのような獣を乗せている。 「誰だ、てめえ?」 喧嘩腰のヴィータに、少年は答えた。 「俺は安倍昌浩。陰陽師だ」 「ま、半人前だがね。晴明の孫」 「孫言うな!」 肩の獣が茶化すように言う。それに少年は半眼で唸る。 「そのウサギ、喋るのか?」 「うん。ウサギじゃないけどね。物の怪のもっくんって言うんだ」 「俺は物の怪と違う」 「おんみょうじ? もののけ?」 聞いたことのない単語の連続に、ヴィータが胡乱げに眉をひそめる。一方、昌浩も怪訝な表情だ。 「君たちは一体? かなりの霊力を持っているようだけど・・・・・・」 昌浩たちは内裏を炎上させた妖怪を追っていた。妖怪の主を突き止めたと思ったら、変な風体の女たちが戦っていた。状況を飲み込めずとも仕方ない。 シグナムが代表して、前に出た。この世界の常識がわからない以上、この少年を頼りにする他はない。 「私の名はシグナム。この地に来たら、突然、化け物に襲われて困っていたところだ。助けてくれて感謝する。彼女がシャマル。こちらの狼の姿をしているのがザフィーラだ」 シグナムたちは昌浩の見たこともない服装をしていた。特にシグナムの服はすらりと伸びた足が裾から見えて、昌浩は目のやり場に困る。 「し、しぐなむ? しゃまる? ざふ? ……変わった名前だね」 昌浩が舌をかみそうな様子で名前を呼ぶ。ヴィータがそれを鼻で笑う。 「はっ! てめえの名前だって変わってるだろうが。昌浩だっけか?」 「こら、名前は一番身近い呪なんだよ。馬鹿にしちゃいけない。それで、君の名前は?」 「ヴィータだ」 「びた? なんか濡れ雑巾が落ちたような名前だね」 「てめえ! 言ってることが違うじゃねぇか!」 カッとなったヴィータがつかみかかろうとするのを、シグナムが押しとどめる。 「すまない。われわれはここに着たばかりで、勝手がわからないのだ。出来れば説明してもらえると助ける」 「うーん。どうしようか、もっくん」 「さてな。晴明に聞いてみたらどうだ?」 「構わんよ。家に来てもらいなさい」 突然の声に、昌浩たちはぎょっとなる。 振り返ると、白い衣をまとった長身の青年が、穏やかな笑みをたたえて立っていた。 「せ、晴明!」 「え? あれ、じい様なの?」 もっくんと昌浩が目を丸くする。 「遠方より客来ると占いに出ていたが、いやはや、ここまで特殊とは。この晴明も恐れ入った」 晴明は意味ありげに笑みを浮かべる。 「では、私は客をもてなす用意をする。昌浩、案内は任せたぞ」 それだけ告げると、晴明は風のように姿を消す。 「じゃあ、ついてきて」 シグナムたちは昌浩に連れられて、彼の家に向かった。時刻が遅いせいか、それとも文明がそれほど進んでいないのか、明かりの類はほとんどない。月と星の光だけが木造の家屋を照らしている。 「似てる」 道中、町並みを見渡していたシャマルがポツリと呟く。それにシグナムが反応した。 「似てる? 何にだ?」 「この道なんだけど、前にテレビで見た京都のものとそっくり」 「言われてみれば、昌浩殿の服装も時代劇に出てきたものによく似ているな」 「何だよ。タイムスリップしたとでも言いたいのか?」 ヴィータが目を細める。 「よく似た別世界なのだろうが、その可能性もある。思い込みは危険だが、手がかりがあるのはありがたい」 昌浩は裏表のない性格のようだが、後から出てきたあの青年はどうも油断がならない。下手をすると、奴にいいように使われてしまう危険があった。自分たちの判断材料が欲しい。 やがて昌浩の家にたどり着いた。木造で一階しかないが、敷地面積が半端ではない。その広さにヴィータは唖然となった。 「お前、もしかしてすごい金持ちなのか?」 「違うよ。家が広いだけ。俺の家より広くて豪華な家なんて、たくさんある」 昌浩が苦笑する。 一行は家に入り、廊下を進む。しかし、進むにつれて、昌浩の顔が険しくなっていく。 「どうした?」 「別に。ここだよ。じい様入ります」 シグナムたちは奥にある一室に入った。そこには灯火の光に照らされて、顔に深いしわの刻まれた白髪の老人が座っていた。 てっきりあの青年が出迎えると思っていたシグナムたちは拍子抜けした。 「誰だよ。この爺は」 「さっき会った人だよ。俺のじい様」 昌浩がヴィータに憮然と告げる。 「馬鹿いうな。ぜんぜん違うじゃねえか」 「つまりこういうことじゃよ」 老人が目を閉じると、その体からあの青年が浮かび出てくる。 「これは離魂の術といってな、魂だけを遠くに飛ばす術じゃ。魂の姿だから、わしの全盛期の姿になれる」 シグナムは愕然とした。こんな魔法は知らないし、それを行うのにどれだけの魔力を使うか、見当もつかない。 (もし、この老人から魔力を奪えれば・・・・・・) シグナムの手がピクリと動いた。 その瞬間、夜色の外套をまとった男が突然現れた。 「うわっ。どっから現れた!?」 男は無言でシグナムに視線を送る。あの刹那に漏れた殺気を感じ取られたらしい。 「六合(りくごう)。下がりなさい」 晴明に言われて、外套の男は姿を消す。 「失礼。彼らは十二神将といって、わしの式神・・・・・・・そうさな、そなたたちと同じような存在といえば、お分かりかな」 老人は手にした扇をシグナムたちに向けてにやりと笑う。 (我ら守護騎士と同じ……つまり人ではないということか) どうやら正体をほぼ看破されているらしい。ますます油断がならないと気を引き締める。 「彼らは隠形(おんぎょう)といって、あのように姿を自在に消せる」 「便利なものだな」 「えっ? 人じゃないの?」 昌浩が驚いて、まじまじとヴィータたちを見つめる。 「じろじろ見るんじゃねぇ」 ヴィータが昌浩の足を踏みつける。足を抑えて飛び跳ねる昌浩を、晴明が大げさなしぐさで嘆く。 「おお、昌浩よ。そんなことにも気がつかないとは」 「そりゃ、衣装は変わってるなとは思いましたけど、だって人間と寸分違わないじゃないですか」 ザフィーラが普通の動物ではないことはわかっていたが、他は人間だと信じ込んでいた。 「己の未熟を棚に上げて、言い訳とは。わしの教えが悪かったのか。じい様は悲しいぞ」 「はいはい。すいませんでした!」 昌浩が不機嫌に怒鳴る。晴明はわざとらしい泣き真似をやめると、シグナムたちに向き直った。 「では、そちらの事情からお話いただけるかな?」 シグナムは慎重に言葉を選びながら説明した。こちらが人間ではないとわかっているなら、都合がいい。主が命の危機にあり、救うためには大量の魔力がいる。闇の書や詳しい話は省いたが、嘘は言っていない。 相手は百戦錬磨の狸爺だ。下手な嘘はすぐに見抜かれるだろう。 「魔力?」 昌浩が疑問を口にする。それにはむしろシグナムが困惑した。 「昌浩殿もあの化け物たちも使っていたではないか」 「ああ、霊力のことか。化け物が使っていたのは、妖力だけど」 「どうやら、こいつらはすべて一括りに魔力と呼んでいるようだな」 もっくんが納得したように頷く。 シグナムは話を元に戻した。 「あの窮奇とかいう化け物の魔力を奪えれば、主は助かるかもしれない」 「なるほど。窮奇か。大陸から渡ってきた妖怪。それもかなりの大物だな」 「こちらの事情は説明した。次はそちらの番だ」 晴明の話は聞いたことのない単語が多く、シグナムたちは理解に苦労した。 ようするに、晴明はこの国の政府の要職にあり、その政府で一番偉い人の娘があの化け物に命を狙われている。それを退治しようとしているのが、晴明と昌浩だった。実際に動いているのは昌浩だが。 「窮奇の目的は力のあるものを喰らって、傷を癒すこと。かの大妖怪が完全な状態になれば、どんな災厄を招くか。我々の目的はどうやら同じのようだ。協力していただけませんかな?」 晴明が提案する。 シグナムたちはすばやく視線で意見を交わす。窮奇を退治するには、自分たちだけでは心もとない。晴明も昌浩もあの十二神将もかなりの実力者だ。これだけ心強い援軍を得られるなら、願ってもない。 「こちらからもぜひお願いする」 (それにもし化け物退治に失敗しても、彼らの魔力を奪うという選択肢もできるしな) シグナムの心に苦いものが広がる。そんな裏切りをすれば、主はやてはきっと悲しむだろう。だが、彼女を救う手が他にないのであれば、シグナムはその手を汚すことにためらいはない。 「決まりですな。では、今夜は我が家に泊まるといい。私の客人ということで、部屋は用意してあります。それにその衣装も目立ちすぎますな。代わりの物を用意しましょう。それと気をつけていただきたいのですが、ここでは妙齢の女性が素顔をさらして歩くことはあまりない。出歩く時はそれを忘れないで下され」 「わかりました。何から何まで世話になって申し訳ない」 シグナムが頭を下げる。ますます古い日本の風習にそっくりだ。それを参考に行動すれば、そこまで問題はなさそうだ。 「いえいえ。お安い御用ですぞ。では、今宵はこれまでということで」 シグナムたちは別の部屋に案内された。そこにはすでに三人分の布団が敷いてあった。薄い衣を重ねて掛け布団にしている。さすがにザフィーラの分はないようだ。 ヴィータとシャマルは横になると、すぐに寝入ってしまった。 疲れていたのだろう。特にシャマルは本来後方支援なのに、前線で戦ったのだ。無理もない。 今日だけで闇の書のページがかなり埋まった。窮奇を倒せば、もしかしたら、闇の書の完成すら夢ではないかもしれない。 晴明が裏切るとは思えないが、念のため、シグナムとザフィーラが交代で見張りにつく。 夜は静かにふけて行った。 目次へ 次へ
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恐怖心を感じなかったことなんてない。 いつも戦うのは怖かったし、別の次元世界にいる凶悪な魔法生物などは外見から既に恐ろしいものだった。 それでも戦えたのは皆を守るためだったから。大切な友達や仲間、助けを求めている人達のためだから戦えた。 けれどあの時から本当に怖くなってしまった。 大切な、本当に守るべき大切な人が、出来てしまったから。 死ぬのは怖くない。けれど自分が死んで彼女を一人ぼっちにしてしまうのは怖い。どうしようもなく怖い。 あの怪我でわたしはまた弱くなった。このままでは本当に死ぬかもしれない。絶対に死ぬわけにはいかないのに。 そんな悩みを抱えているわたしの前に、彼は現れた。 リリカル×ライダー 第九話『仮面』 俺は無断外出がバレてしまい、隊長室に呼ばれていた。 「……で、カズマ君はなんで外に出とったん?」 はやては珍しく怒っていた。真面目な表情を見た時も驚いたのだが、今回はそれ以上のものだった。 「俺は、その、外の空気が吸いたくて」 「それだけのためにわざわざヴァイス君のバイクを持ち出しとったん?」 はやてがこちらを睨み付けながら痛いところを突いてくる。流石ははやて、普段から口論で勝てた試しがないほどの弁達者だ。いや、俺が下手くそなのもあるだろうが。 ただ、今回はこちらも必死なのだ。負けるわけにはいかない。 「実は、怪物を倒そうと思って街を捜索してたんだ」 嘘は、ついていない。内容は事実そのものだ。 「……もしかして、この前の事件の?」 ティアナと出かけた時の、ローカストアンデッドの事件のことだろう。こいつのカードには色々と複雑な念を抱いてしまう。頼りにもなり、災いの種にもなる、そんな思いだ。何故かは分からないが。 閑話休題。 「俺なりに責任を感じたからな。でもごめん、皆に迷惑かけたな」 取り敢えず謝る。事実、彼女には迷惑かけっぱなしだ。この期に謝っておくべきだろう。 「――ホンマ頼むから心配かけんでや」 はぁ、とため息をつくはやて。部隊長として忙しいにもかかわらず迷惑かけたのは本当に申し訳なかった。 けれど、やめる気は全くないが。 「ところで、誰が気付いたんだ?」 「ん? キャロが気付いたんよ。芝生が荒れていたのを気にしててな」 そうか、と俺は納得した。 ・・・ 「ライダー……僕とカリスの決闘を邪魔したお前を、僕は絶対に許さない!」 空を舞う人影が羽根を引き抜く。高層ビルが乱立する、人工のジャングルとも言うべき街を見下ろしながら。 彼が思い浮かべるのは一万年前のバトルファイトと、十五年前の人間が起こした偽物の殺し合い。 前者はカリス――ハートのカテゴリーエースとの闘いを、後者は『仮面ライダー』と名乗る人間との戦いを想起させる。 カリスとはいわゆるライバルであり、バトルファイトに決着をつける際、戦おうと誓った仲だった。逆に『仮面ライダー』はその神聖な決闘を妨害した憎き敵だった。 「あの男が望む通り戦ってやろうじゃないか。そしてカリスを解放し、もう一度あの続きを――!」 彼は怒りを、そして決意を固めながら憎むべき人間を俯瞰する。 人影、否、雄々しい翼を伸ばした人ならざる者の影から、鋭利な刃物のような羽根が鋭く投げられる。それは煌く軌跡を描きながら地表へと吸い込まれていく。 またしても、クラナガンで被害者の絶叫が響いた。 ・・・ 「ダメダメですよ~! 一人で外出なんて~」 俺は訓練場に行きながらリィンにこっぴどく叱られていた。もっとも、身長30cm程度のリィンが怒っても可愛らしいだけだ。俺としては気にもならない。 「悪かったよ」 「もう、外出ならリィンがついていきましたのに~」 いや、それじゃ意味ないから。と心の中で突っ込んでみる。 そんな雑談をしている内に、俺は訓練場に辿り着いていた。 今日も誰もいない。皆捜査に奔走してるみたいだ。俺は日課の訓練をこなすためにリィンを連れて来ていた。リィンがいなければ訓練場の空間シミュレーターが制御できないからだ。 「じゃあ、いつもの続き、やりますよー!」 おー、と言って答えるが、当然やる気はない。ここの所、寝不足がかなり響いていて、ときおり眩暈すらするほどだった。 ――ドクン。 そう、こいつらのせいで。俺はあんな狂った力を使わなければならなくなるんだ。そのために睡眠時間が削られているんだ。 だが、今回の反応はいつもと違っていた。 ――ライダー……ッ! (まさか、上級アンデッドか!?) 上級アンデッド。 カテゴリージャック、クイーン、キングのアンデッド達のことだ。 奴らの最大の特徴は、絶大な力と前回の優勝者の生物への擬態能力。 奴らは前回の優勝者、ヒューマンアンデッドの一族、『人間』に擬態することができるのだ。つまり奴らは『人間』が持つ最大の武器、“知恵”を所有している。 「どうしたんですか?」 奴らはマズい。このままにはしておけない。訓練は後回しだった。 「悪い! 野暮用が出来た!」 「カズマさん!?」 俺は一気に走り出す。チェンジデバイスを起動させて腰に巻き付ける。 「変身!」 『Drive ignition.』 レバーを引っ張ると同時に、たちまち俺の姿は青の拘束着を思わせるインナースーツと不自然に肩と腹の部分が塗りつぶされた銀色のアーマー、そして甲虫を象った仮面が貼り付いたヘルメットという組み合わせのバリアジャケットに包まれる。 『Fry booster』 そして飛行魔法を発動し、背中のブースターを閃かせながら低空飛行で一気に飛び去ることにした。 (ライダー……?) 一つの単語が、妙に頭の隅に引っ掛かりながら。 ・・・ (カズマ君……) あの夜、見てしまった真実が網膜から離れない。 緑色のおぞましいと思わせる肌と、鋭い眼を隠すように付けられた透明なフェイスガード。そして鋭利な刃物を思わせる右腕から伸びた突起物。 彼の正体が、実は人々を殺戮する怪物だったなんて信じられなかった。 普段の彼は多少粗暴なところはあっても基本お人好しで、困った人がいれば迷わず助けにいくような人だ。そう、彼なはずがない。 けれど、もし彼が怪物事件の犯人なら。 (わたしが、何とかしなくちゃ) そう、わたしが機動六課を守らなくちゃ。そのための隊長であり、そのためのエースオブエースなのだから。 けれど、わたしは本当に戦えるのだろうか……? 「なのは、行くぞ!」 「あ、ごめん、ヴィータちゃん!」 ヴィータちゃんが赤いドレス型のバリアジャケットから伸びるスカートをはためかせながら怒鳴り声を上げる。後ろでスバルも手を振ってくれていた。 取り敢えずカズマ君のことは帰ってから。今は任務に集中しなくちゃ。 ・・・ 「ふん、来たか」 眼鏡をかけたインテリのような雰囲気を持つ男が、スーツを直しながら呟く。 巨大ビルの屋上ヘリポート。天を突く摩天楼に築かれた二人だけのコロッセウムにて、男は待ち続ける。 そして、彼は現れた。 銀色の装甲とブルーのアンダースーツ、甲虫を模した真紅の複眼が印象的な仮面。 だが男の目からは以前と節々が違うように感じられた。肝心な腹と肩の部分に描かれるはずのマークもなく、剣も形が異なる。 「お前が、上級アンデッドか!」 仮面の男――カズマが叫ぶ。 「待っていたぞ、ライダー!」 男もそれに答える。カズマの反応を見て、眉間に皺を寄せながら。 「……本当に覚えていないとはな」 男の呟きはカズマには届かない。 男は一度だけ首を振った後、顔を上げた。 その瞬間、男に変化が生じる。 一瞬にして、右手に鋭い鉤爪を付け、雄々しい翼を広げる、黒い鎧と羽毛に覆われた怪人に変化していた。 「……上級、アンデッド」 カズマが驚きの声を上げる。理解しているのと目の当たりにするのでは訳が違う、それを認識させられたというような声音だ。 一方の男――イーグルアンデッドはすでに鉤爪を構えながら大空に浮かび上がり、戦闘態勢を整えていた。 「いくぞ、ライダー!」 イーグルアンデッドが羽根を手裏剣のように投げ付ける。鋭利な羽根は肉を抉らんとカズマに襲い掛かる。 「くそっ!」 カズマも後ろに飛んで避けながら背中のブースターを噴かし、空中に上がる。 「ほう、フロートのカード無しで飛行できるのか」 感心しながら観察と羽根手裏剣による牽制を行うイーグルアンデッドに対し、カズマはその不完全な剣を抜いて羽根の迎撃を行う。 「今度は負けん!」 イーグルアンデッドは羽根をばら撒いた刹那、右腕を振り上げながらカズマの隙を突くようにして自ら襲い掛かった。 『Protection』 だが、今度はイーグルアンデッドが驚愕する番だった。 イーグルアンデッドの鉤爪が装甲に達する寸前、青のバリアに阻まれる。ガード魔法、プロテクションがオートで発動したのだ。 「魔法だと!?」 イーグルアンデッドのような上級アンデッドは人の姿に化けることができる。故にヒト社会に潜り込むことが可能だ。 彼が潜伏して知った驚きの事実、それが魔法だった。 たかが人間がアンデッドにしか出来ないような“超”能力を行使したことに驚きが隠せなかった。 そして目の前のライダー、何故以前は使えなかった魔法などという技を、こいつが覚えているのか。 「ふん。こんなもの、破壊すればいいだけの話しだ!」 イーグルアンデッドは頭から余計なことを振り払うかのように首を振って、右腕の鉤爪を叩き付けた。 その破壊力は、容易く強固なプロテクションを打ち砕く。 「ぐあっ!」 衝撃に吹き飛ばされるカズマ。 すかさずイーグルアンデッドはカズマを追跡する。 「――この程度なのか、ライダー」 連続して繰り出される鉤爪を剣で払うカズマだが、一本二本と装甲に傷が入っていく。 カズマは反撃に転じようとするも、悉くカウンターを食らってしまう。 「これで、終わりだ!」 イーグルアンデッドが隙を突くように渾身の回し蹴りを叩き込む。 強烈な一撃に意識を刈り取られたカズマは、そのまま地上へ落ちていった。 「カリスよ、やはり僕と戦えるのはお前だけのようだ」 どこか哀愁を漂わせる、独りの男を残して。 ・・・ 「――さん」 誰かが俺を呼んでいる。起きて反応しなければならない。 けれどとても瞼が重くて、反応出来そうにない。それに、こうしている方が心地良いから、反応したくない。このまま眠っていたい。 「……マさん」 鬱陶しい。このまま眠れば、これ以上苦しまなくてすむんだ。もうあの苦しみから解放されるんだ。 だからこれ以上、俺を起こさないで―― 「――カズマさんっ!」 「うわっ!?」 リィンの怒鳴り声が一気に俺の意識を覚醒させる。ついさっきまで考えていたことをすっかり忘れ去ってしまうほど、豪快な起床だった。 「ど、どうしたんだリィン?」 「どうしたもこうしたもないですよっ! あんな高い所から落ちてきたから心配してたんですよ!?」 そう言われて空を仰ぎ見る。 すぐ近くには、天を突く勢いの巨大なビルがそびえていた。 (そう、か。あの上から落ちたのか) そっと周りを見渡す。地面に叩きつけられたならあの血が飛び散っているはずだが、それはない。ほっと安心すると共に疑問が湧き上がる。 「なんで、無傷なんだ……?」 「リィンが受け止めたからですっ!」 泣きそうな顔で覗き込んでくるリィン。 彼女は普段の妖精みたいな外見から、ヴィータみたいな小学生ほどの体格に成長していた。魔法とその体で受け止めてくれたのかもしれない。 しかも、何故か膝枕をされているのも謎だ。 「あ、これはですね、変身魔法の一環で体を大きく出来る魔法なんですよ!」 普段の30cmの体格では嫌が上にも彼女が人間ではないことを痛感させられるが、今の姿なら人間の子どもと大差ない。 そんな子どもに膝枕されていると思うと段々恥ずかしくなってきた。 「普段は何で小っちゃいんだ?」 「む、私だってこっちの方が子ども扱いされないから良いですけど、あっちの姿の方が魔力の節約とかで便利なんですぅ~」 こっちも子どもじゃないか、とは言わなかった。女性に余計なことを言うとろくなことにはならないことを何故か理解していたから。 (……待てよ、俺は何かを忘れて――) 「――リィン! あいつは!?」 「はひゃ!? び、びっくりしました~」 「いいから! あいつはどこに?」 最初は目を真ん丸にして驚いていたリィンの顔が徐々に陰り、最後は視線を反らしていく。嫌な予感がふつふつと湧いてきた。 「……見失いました」 間違いない。あいつは人間に化けたのだ。すぐに探さなければまた被害者が出てしまう。しかし―― 「取り敢えずカズマさんも起きましたし、結界を解いたら六課でたっぷり事情を聞かせてもらいますからね」 ――どうやら、今すぐ探すことは出来なさそうだった。 ・・・ 「くくくっ」 百階以上はあると思われる高層ビルの屋上にて男は笑う。高らかに、嘲りを込めて。 その瞳が映すモノは世界か、己か。 「やはりアンデッドには魔法が通用しないようだな」 男は理知的で寡黙そうな顔に獰猛で野蛮な笑顔を浮かべ、下界を見つめ続ける。 世界は何も知らないかのように整然と動く。いや、実際何も知らないのだろう。だから例え人が墜落しようと、街は決して変わらない。 「いや、奴が勝てないのはそれだけじゃないか。記憶がないんだからな」 男は笑みを深めながら右手で弄んでいるカードを見つめる。 端にスペードの刻印とアルファベットのAが穿たれ、鮮やかで生き生きとした甲虫らしき生物が描かれたカード。 たかが紙切れ一枚に、どれほどの力が宿っているか、人々は知らないだろう。アクセサリーに強大な力を込めたもの、デバイスを作れる連中には良い皮肉だと男は考える。 「さぁ、お前にきっかけを与えてやるよ。俺は“お前”を倒す必要があるんだからな」 男はベルトに下げたホルダーの中から箱型の機器を取り出し、それを忌まわしげに握りしめる。それは中央に黄金の三角形――ゴールデントライアングル――が埋まったクリスタルを嵌めた機器。 「俺はオリジナルを殺し、本物になる。そのためにまずは剣崎、お前を倒す!」 決してこの男には似合わない笑い声を上げながら、彼は世界に向かって吠えた。 ・・・ あの上級アンデッドとの戦いから次の日、俺は帰って早々はやてから散々怒られたことを思い出していた。 『無茶してもし死んどったらどないするん!?』 「無茶しても死ねないからなぁ」 どこか自嘲気味に呟きつつ、最近フラッシュバックする光景が思い浮かぶ。雪山。近付く地面。ぐしゃりという音。周りに広がる“緑”の血。 夜な夜な俺を苛む記憶の断片。それが俺を追い詰めている。それが分かる。 人ではない。 そう、俺は化け物なのだ。それをありがたくも再確認させてくれる。お陰で睡眠時間は減る一方だ。これなら記憶が戻らない方がまだマシだったかもしれない。 一度頭をかきむしり、思考をリセットする。そう、今考えることはあの上級アンデッドのことだ。他のことは、今はいい。 (ジョーカーでいくのでは飛行能力を持つアイツに勝つのは難しい。だからといって魔法では勝ち目はない……) どんどん選択肢が無くなっていっていることに気付いた。これでは奴に勝てない。考え方を変えなければ。 そんなとき、機動六課演習場に凄まじい騒音が響き渡った。 ・・・ 「何や!?」 爆音と共に、はやての声が響きわたる。 はやてが覗き込んだ窓の向こう側から、煙が昇った演習場が見える。それを見て、はやては顔を青ざめた。 「ザフィーラ! ちょっと調べてきてくれんか?」 『了解です、主』 はやてが念話で己の守護騎士を呼ぶ。 六課に残る戦力は看護班のシャマル、指揮官のはやて、そしてフリーのカズマとザフィーラだけ。その上、はやては強力すぎる部隊にならないよう戦力規制のリミッターがかけられており、シャマルは前戦向けではなく、カズマは負傷中。戦えるのはザフィーラだけだった。 隊舎から飛び出す蒼き狼は四肢を振るって海上に浮かぶ演習場へと向かう。疾風を纏うかのような速さで滑り込んだ彼が見たものは、立体シミュレーターによって作り出されたコンクリートを出鱈目に打ち砕く怪鳥ならぬ怪人だった。 「何者だ」 低く、唸るような声でザフィーラが言葉を投げかける。彼も人ではないからか、怪人に即座に襲いかかるような真似はしなかった。 「……今度は犬畜生か。人間といい犬といい、僕とカリスを邪魔するには役不足な連中ばかりだ」 「俺は犬ではない! 狼だ!」 ザフィーラが毛を逆立たせ、低く腰を落とす。途端、彼の体が白く輝きだす。その姿が、一瞬にして獣人のそれに変わった。 鍛え上げられた筋肉、がっしりとした逞しい体、そして白い髪とそこから生える犬耳。 寡黙な顔をしかめさせながら、ザフィーラはファイティングポーズを構える。 「ほう、人間のしもべに成り下がった犬畜生がアンデッドに刃向かうとはな」 「盾の守護獣、ザフィーラだ! 俺を侮辱し、主の御元を傷付けるお前を許さん!」 ザフィーラは足元に三角形の魔法陣を展開し、それを蹴飛ばすような勢いで怪人――イーグルアンデッドに挑みかかった。 「犬ごときが、この空に上がるな!」 それに対しイーグルアンデッドは雄々しい剛翼を広げ、鋭利な羽根を雨のように降らせる。そのナイフの豪雨をザフィーラは両腕に展開した三角形の魔法陣で巧みにはじいていく。 「その程度、俺には効かん!」 そういうザフィーラに対し、イーグルアンデットは右手を振り上げて答えた。 「この程度で消えてくれた方が良かったんだがな」 イーグルアンデッドの傍にまで接近したザフィーラにその鉤爪を振り下ろす。ザフィーラは二つの盾をもって防ぐが、イーグルアンデッドは強引に爪をねじ込み、怪力をもって盾を打ち砕いた。 「ぐぉ!?」 「犬がアンデッドに楯突くんじゃない!」 さらに連撃として左ストレートを打ち込まれ、吹っ飛びザフィーラ。 だが筋肉の鎧で包まれた守護獣は、この程度で怯みはしない。 「まだまだ、いくぞ! 『鋼の軛』!」 ザフィーラが両腕を構えると同時に大空を舞うイーグルアンデッドを囲むようにいくつもの魔法陣が浮かび上がる。 それらがイーグルアンデッドに向いた瞬間、魔法陣から白き拘束条が勢いよく伸びる。 「それがどうした」 それらをイーグルアンデッドも避けるが、二本が翼を貫通する。すぐに引き抜こうとするが、拘束条が膨らんでいき、抜けなくなる。 それはまさに、空に射止められた鷲。 「なんだ、これは!?」 「俺の『鋼の軛』はあらゆるものを貫いて捕獲する拘束魔法。お前も、これで終わりだ」 羽ばたくこともできず空中に停止させられた状態のイーグルアンデッドは最初こそ暴れていたが、すぐに大人しくなった。 「主、終わりました」 それを降服と受け取ったザフィーラは念話で主を呼ぶが―― 「ふん、これで終わるかと思ったか?」 「――何?」 彼は右腕を掲げる。嵌められた黒光りする鉤爪が閃く。それは決して降参のそれではなく、むしろ必勝を思わせるもの。 イーグルアンデッドは、その鉤爪で自らの翼を斬り落とした。 「ぐっ!」 「なん、だと!?」 そしてその刹那、千切れた断面から新たな翼を生やした。 「ぐおっ……!」 「翼を、強引に再生だと!? なんという生命力だ!」 そしてイーグルアンデッドは隙を見せたザフィーラの懐中に一瞬で入り込み、鉤爪を嵌めた右手による右ストレートを腹に叩き込んだ。 「ぐおあぁぁっ!」 血を噴き出しながら墜落するザフィーラ。それを受け止めたのは、はやてだった。 「ある、じ……?」 「喋ったらあかん。シャマル、すぐに治療を」 「はい」 あの念話から急ぎ赴いていたはやてとシャマルは、用意していた回復魔法によってザフィーラの治療を開始する。 だがそこに、イーグルアンデッドが舞い降りた。 「人間の、しかも女か」 右手を構えながら近付くイーグルアンデッドに立ちはだかるはやて。その彼女に対し、侮蔑の響きを込めた言葉を投げ掛ける。 だがはやてはその程度に屈するほど弱い女ではない。 「これ以上、好き勝手はさせん」 はやては自らの十字架を模した杖型デバイス、シュベルトクロイツを構え、イーグルアンデッドは己の誇る鉤爪を構える。 一触即発の空気。 そこに割って入る影。それは、カズマだった。 「お前の相手は俺だ!」 「ライダー、貴様は負けたのだ。下がれ」 それを無視し、剣を引き抜くカズマ。腰を下げ、垂直に立てた剣に左手を添える独特な構えを取る。 「カズマ君は怪我しとるんよ!? 下がって!」 はやては自らの前に躍り出たカズマを引き下がらせるべく腕を伸ばす。 だがそのとき、周囲を白い煙幕が包み込んだ。 「何や!?」 はやての叫びすらも包み込むように広がる煙幕は演習場を瞬く間に包み込んでいく。はやてとシャマル、ザフィーラは一か所に固まっていたが、イーグルアンデッドとカズマはそれぞれバラバラに動き出し、まもなく散り散りになっていく。 「くそっ、あいつはどこだ!」 煙幕の中を彷徨い歩きながら、イーグルアンデッドを探すカズマ。 そんな彼の元に一枚のカードが滑り込む。 「受け取れ」 「なんだ!?」 カズマの右手にいつの間にか握られたカード。そして男の声。 どこから響くかも分からないそれが、カズマの記憶を激しく刺激する。 「今の声……、それにこのカードは」 カズマは手元のカードを握りこみ、変身を解く。 「裏だ」 聞き覚えのある声。そう、かつて自らを鍛え、導いた先輩である、戦友でもある男の声。 カズマは、本人も気付かない内に行動を開始していた。 「そうだ――俺は」 チェンジデバイスの裏、カードを挿入するラウズリーダーが顔を覗かせる。それを見てカズマは右手のカードを差し込んでいく。 そしてそれを腹部に持って行った刹那、チェンジデバイス側面からトランプのカードに似たものが幾枚も飛び出し、カズマの腰にベルトに変化しながら巻きついていく。 そう、その姿は―― 「――そうだ、俺は『仮面ライダー』だ!」 『Turn up』 カズマがレバーを引いた直後にチェンジデバイス中央のクリスタル、その中のゴールデントライアングルが回転し、そこから青いエネルギーゲート、オリハルコンエレメントが射出される。 「うぉぉぉあぁぁぁ!」 それを潜ってカズマは、「仮面ライダー」へと変身した。 ・・・ 遂に「仮面ライダー」に変身したカズマ。再誕した彼とイーグルアンデッドとの第2ラウンドが始まる。 一方、それを眺める三人の男達は、それぞれが行動を開始する。その目的とは―――― 次回「ライダー」 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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「姫矢さぁん!」 光の中に消えていくウルトラマン―姫矢准。僕はただ、彼の名を叫ぶことしか出来なかった……。 ダークメフィストこと溝呂木眞也と姫矢を包む消滅を告げる光が、異空間の暗い空を満たしていく。それはこの 一連の事件の終焉を示すものでもあり、また―……。 「ここは……何処だ?」 ウルトラマンで‘在った 者、姫矢准にとっては新たな始まりを意味していた。 鳴海の岸に流木と共に漂着していた彼の手には、デュナミストの証がしっかりと握られていた。それの僅かな鼓動と 共に、彼はこの世界で眼を覚ます。 手に入れたのは光の力。出会いと別れ。悲しみを知る彼が不屈の心を持つ少女と出会う時、新たな絆が生まれ来る。 魔法少女リリカル☆なのは~NEXUS~ 始まります 目次へ 次へ
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なのはが襲撃され、魔力を奪われ、そして甲児が管理局へと協力することを決めたその日の夜、八神家にて。 「澄んだ太刀筋だった。よい師に学んだのだろうな。武器の差がなければ、少々苦戦したかもしれん」 その日の戦闘について、シグナムとザフィーラが話している。 服を捲り上げ、そこに見えた肌には生々しい痣が。フェイトとの戦闘でついた物である。 それでもシグナムは笑顔。前話でも言ったが、まるで戦闘狂である。 「それでもシグナムさんなら負けない。そうだろう?」 予想していなかった所からの声。振り向くと、彼女らの家族の最後の一人である青年、デュークの姿があった。 彼は蒐集の事を知らないはず。それでもこう言ってきたということは……おそらくバレている。 そう思ったシグナムは捲り上げた服を戻し、そして答えた。 「……そうだな」 さて、蒐集のことがバレているとなれば、やはり話して口止めするべきだろうか? それとも、ばれているのを承知の上で黙っているか、そこが問題である。 そう考えていると、デュークの口から予想もしない言葉が飛び出した。 「でも、剣道も程々にしてくれよ。怪我をするまでやって、それではやてちゃんを心配させないでほしい」 「……は?」 シグナムらしからぬマヌケな声。それを聞いたザフィーラも首をかしげる。 剣道? 何故今ここでその話が出てくる? 蒐集の事がバレているのではないのか? 「え? シグナムさんが働いている剣道場での事を話していたんじゃないのかい?」 デュークは心底不思議そうな顔で問い返した。彼はどうやらシグナムがアルバイトで先生をやっている剣道場での出来事を話していたと思っていたらしい。 その問いでようやくその事に気付いたシグナムが、あたふたとした様子で取り繕った。 「い、いや、剣道場での事だ」 余談だが、ザフィーラはシグナムのこのリアクションでバレそうだと肝を冷やしていたらしい。 第四話『お引っ越し、そしてグレンダイザー復活』 それから数日後、時空管理局本局の一室では、リンディをはじめとしたアースラスタッフが集まっていた。 先日の襲撃の際にシャマルが持っていた本……あれは『闇の書』と呼ばれるロストロギアであり、クロノの父の死の原因となった因縁の品。 今回集まっているのは、その闇の書及びその捜査に関する説明である。 「さて、私達アースラスタッフは今回、ロストロギア『闇の書』の捜索及び、魔導師襲撃事件の捜査を担当することになりました。 ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります」 そう前置きし、ぐるりとスタッフ一同を見回す。全員が緊張の面持ちをし、次の言葉を待っているようだ。 ……もっとも、闇の書というものがいったい何なのかを理解していない甲児だけは例外だが。 リンディはそれに気付かずに次の言葉を発した。 「分轄は、観測スタッフのアレックスとランディ」 「はい!」 「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同」 「はい!」 「司令部は、私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん、甲児さん、以上4組に分かれて駐屯します」 ここまで言い終えたところで、数瞬の沈黙が流れる。 その沈黙を振り払ったのはまたしてもリンディ。ここまでとは違い、一気に口調を柔らかくして。 「……ちなみに司令部は、なのはさんの保護を兼ねて、なのはさんのお家のすぐ近くになりまーす♪」 それを聞いたなのはは、一瞬驚いたような顔をし、続いて同じような顔をしていたフェイトと顔を見合わせる。 その後で言葉の意味を頭の中で反芻し……「捜査の司令部」という形だとはいえ、フェイトが近所に引っ越してくるということを理解し、満面の笑みを浮かべた。 その翌日。 この日、海鳴市のとあるマンションの一室に一組の家族が引っ越してきた。表札には「ハラオウン」と書かれている。 お気付きだろうが、ここがリンディの話していた捜査司令部である。業者は気付いてはいないようだが、捜査のための機器もしっかりと引越し荷物として運び込まれているようだ。 「凄ぉい! 凄い近所だ!」 「本当?」 「うん! ほら、あそこが私ん家」 ベランダに目を向けると、なのはとフェイトが大はしゃぎしている。そこからなのはが指差した先には、なのはの実家である喫茶店『翠屋』が。 それを近くで見ているリンディはというと、何をするでもなく笑顔でそれを見ていた。 続いてリビングへと目を向けてみよう。 こちらでは現在、業者に混じって甲児とクロノが荷物を運び込んでいる。 ……もっとも、クロノは背の都合上あまり大きなものは運べないようだが。 「……ん?」 「どうかしたのか、クロノ?」 「いや、今誰かにバカにされたような気がして……」 おっと危ない、地の文に書かれた内容を無意識レベルで感じ取ったようだ。 「まあいいや。それより、これはどのへんに置いとけばいいんだ?」 「ああ、それはそこに頼むよ」 そう言われ、持っていた段ボール箱を運ぶ甲児。荷物を置いてふと目を移すと、見慣れない二匹の動物の姿があった。 片一方はオレンジ色の毛並の子犬。もう一方はフェレット(というには少々変わっているが)。 実はそれは動物形態のユーノとアルフなのだが、面識はあってもこの形態を見たことがない甲児はそれを知る由もない。 ちなみに犬の方がアルフ、フェレットの方がユーノである。 「ペットなんか飼ってたのか……」 「「ペットじゃない(よ)!!」」 「うわ、喋った!? ……って、その声……もしかしてユーノとアルフか?」 「うん。なのはやフェイトの友達の前では、こっちの姿でないと……」 何故この姿でなければならないのかという疑問が甲児の中に生まれるが、きっといろいろ事情があるのだろうと思い深くは突っ込まない。 だから甲児は一言返すだけで済ませた。 「よく分からねえけど、お前らもいろいろ大変なんだな」 「まあね……人間だって知られてなかったとはいえ、女湯に引っ張り込まれたりもしたし」 「わりぃ、前言撤回」 「えぇ!? 何でさ!」 「うっせぇ! 公然と女湯に入るなんて、なんて羨m……いやいや、ハレンチな奴だ!」 あっという間に意見がひっくり返った。 まあ、男の身でありながら、咎められずに女湯に入れるというのは甲児でなくとも羨ましいと思うだr……ゲフンゲフン。 一瞬本音が出て、それで近くにいたアルフとエイミィが白い目で見ていたのは別の話。 それから十数分後、司令部……もとい、ハラオウン家のリビングにはクロノ、甲児、エイミィの三人が集まっていた。 ちなみに他のメンバーは現在、なのはの友人が訪ねてきたのをきっかけに外出中である。 「それで、闇の書ってのは結局何なんだ?」 今の今までその詳細を聞いていなかった甲児が問う。さすがに知っておかなければまずいと思ったのだろう。 もちろんこの日まで数日という時間があったのだからその間に聞けばよかったのだろうが、時空管理局提督『ギル・グレアム』との面談や、マジンカイザーのテストなどでゴタゴタしていて結局聞けなかったらしい。 「……そうだな、知らなかったのなら、この機会に知っておいた方がいいだろう」 クロノは頷いてそう言うと、近くにあった端末を起動させる。 端末に映る映像を次々切り替え、そして目当ての映像……シャマルが小脇に抱えていた闇の書の映像を映したところで説明を始めた。 「ロストロギア『闇の書』の最大の特徴は、そのエネルギー源にある。闇の書は魔導師の魔力と、魔法資質を奪うためにリンカーコアを喰うんだ」 「なのはちゃんのリンカーコアも、その被害に……?」 「ああ、間違いない」 エイミィの問いに答えると、再び端末の映像を切り替える。 今度は闇の書の特質をイメージ映像にしたような動画が映り、それを使って説明を再開した。 「闇の書はリンカーコアを喰うと、蒐集した魔力や資質に応じてページが増えていく。そして、最終ページまで全て埋めることで闇の書は完成する」 「もし完成しちまったらどうなるんだ?」 「少なくとも、ロクな事にはならない……!」 クロノは苦虫を噛み潰したような表情で、そう締めくくった。 「はいはーい、エイミィですけどー?」 『あ、エイミィ先輩。本局メンテナンススタッフのマリーです』 その夜、ハラオウン家のリビングではエイミィとマリーが通信をしていた。 画面に映るマリーの表情からすると、何か難しい問題でも起こったのだろうか? そう考えていると、マリーがその内容を話し始めた。 『先輩から預かってるインテリジェントデバイス二機なんですけど……なんだか変なんです。 部品交換と修理は終わったんですけど、エラーコードが消えなくって……』 「エラー? 何系の?」 『ええ、必要な部品が足りないって。今データの一覧を』 そう言うと、マリーは手元の端末からエイミィの下へとデータを送る。 しかし、修理は終わったのに部品が足りないとは一体どういうことだろうか? エイミィがそう思っている間にデータが届いた。 「あ、来た来た……えっ? 足りない部品って……これ?」 『ええ。これ、何かの間違いですよね?』 エイミィやマリーがそう思うのも無理はないだろう。 何せ必要な部品は『CVK-792』……シグナムやヴィータが使い、なのは達を窮地に追いやった『ベルカ式カートリッジシステム』だったのだから。 レイジングハートもバルディッシュも何を考えているのか。そう思っているうちに、画面には「お願いします」の文字が表示されていた。 それからさらに一週間後の夜。この日、デュークはアルバイト帰りの途中だった。 何故アルバイトをしているのかだが、「世話になりっぱなしでは悪いと思うから」だそうだ。 一仕事終え、八神家へと向かうデューク。だが、その足は一度止まった。 「ん? ヴィータちゃん、こんなところで何をしているんだ?」 彼の目が捉えたのは、今は家にいるはずの家族の姿だった。 はやてもそろそろ眠っている頃のはず。それなのに一人でどこに行くつもりなのだろうか。 気になるが、一度帰ったほうがいいか? それとも見失わないうちに追うべきだろうか? 数分後、気付かれない距離からヴィータを追うデュークの姿が確認された。 場所は変わり、市内のビル屋上。 ヴィータの目的地はここだったらしく、そこにはシグナム達三人の姿もあった。 全員揃って騎士甲冑を装備。さらにシャマルにいたっては闇の書まで持っている。まるで今から蒐集に行くかのような出で立ちだ。 そしてデュークがそこに現れたのは、シグナム達が今まさに出発しようとしていた時だった。 「デューク……何故お前がここにいる?」 「ああ、帰りにヴィータちゃんを見かけたから、こんな時間にどうしたのかと思って……」 それを聞いたシャマルはジト目でヴィータを見る。その対象のヴィータもばつが悪そうだ。まさかつけられているとは思っていなかったようだ。 だがデュークはそんな様子にも構わずに、すぐさま問いを投げかけた。 「それより、四人ともこんな時間にこんな所で一体何をしていたんだ? それに、シャマルさんが持っているその本は……確か闇の書だろう?」 シグナム達にとってこの状況は非常にまずい。何せ闇の書を持ち出している上に騎士甲冑まで装備しているのだ。蒐集の事になどすぐに気付くだろう。 「まさか、はやてちゃんに黙って蒐集をしているんじゃないのか?」 どうやらたった今バレたようだ。 今からどうするかをすぐに頭の中で考える。取り繕うことも今となっては不可能。かといって正直に話したところで理解されるとも思えない。 ならばどうするか……すぐに算出し、そして何も言わずに飛び去ることが決定した。 そうと決まれば善は急げ。デュークが二の句を告げる前にすぐさま飛行魔法でその場を離れる。 ヴォルケンリッターの四人が飛び去った後、そこに残されたデュークは一人呟いた。 「どうしてなんだ? 何で蒐集なんか……」 答えが返ってくることなどはなから期待していなかった呟き。だがそれに対し、答える人物がいた。 「知りたいか?」 いきなりの声に驚き、凄い勢いで振り向くデューク。そこには見慣れぬ仮面の男がいた。 どこからどう見ても不審者だが、シグナム達が蒐集を始めた理由を知っているようなのであえて格好にはつっこまない。 「八神はやてという少女の事は知っているな? 病で足が動かないということも」 そう前置きする仮面の男。そう言われてデュークも頷く。 その答えに満足したのか、仮面の男が先を続けた。 「その足の病の原因は、闇の書による侵食だ。 彼女らヴォルケンリッターは、闇の書から生まれた魔導生命体。その存在を維持するための魔力は闇の書から供給されている…… だが、闇の書は八神はやてが主となってからは一切蒐集をしていない。ならばその魔力はどこから来ている?」 そう言われてデュークはしばらく考える。 蒐集をしていないとなると、当然魔力はカラだろう。ならば一体どこから…… ふと、先程の『侵食』という言葉を思い出し、そこからすぐに彼の脳内で答えが組みあがった。 「……まさか」 「そうだ。八神はやてのリンカーコア、そこから直接魔力を奪っている。 そのせいで八神はやての足は麻痺し、それが広がってついには命すら奪うだろう。 そうなる前に闇の書を完成させ、八神はやての命を救う……それが守護騎士達の目的だ」 明かされた事実に愕然とするデューク。だが、それならこれまでの事も辻褄が合う。 アルバイトから帰ってきた時にはやてしかいない事が多かったのも、蒐集に行っていたから。 先日のシグナムの怪我も、その時に蒐集対象とでも戦って受けたダメージだろう。 そして……はやての病の原因が分からなかったのも、闇の書の侵食によるものだからだ。本来魔法が無い世界では、魔法がらみの病が分かるはずが無い。 「くそっ! 俺は……無力だ……!」 事実を受け止めたデュークは、あまりの無力感に俯き、手を強く……爪が食い込み、血が流れる程に握り締める。 こうしてはやての病の原因が分かっても、自分にはどうすることも出来ない。 ヴォルケンリッター達のように力があれば別だっただろうが、今の自分には無い。 せめて、故郷であるフリード星から乗ってきたロボット『グレンダイザー』さえあれば…… 「無力? 本当にそうかな?」 「何だって?」 デュークが顔を上げると、仮面の男が何かを投げつけてきた。 それをキャッチし、手を開くと……デュークにとって今最も必要なものと同じ形のキーチェーンがあった。 「デューク・フリード、お前のことはすでに調べ上げている。 お前が次元漂流者だという事も、グレンダイザーというロボットに乗っていた事も、それがこの世界に来た時には無くなっていた事も…… 今渡したそれは、グレンダイザーがこの世界に来てデバイスへと変質したものだ」 そう、そのキーチェーンの形はグレンダイザー用の飛行ユニット『スペイザー』と同じ形をしていたのだ。 そのことを聞いたデュークは、はやてを救うための力が手に入ったことを喜ぶと同時に、仮面の男への不信感が芽生えていた。 何故ここまで詳しく状況を知っているのか。何故無くなったはずのグレンダイザーを持っていたのか。そして何故自分にそれを返したのか。 「一体君は何者なんだ?」 「そんな事は今はどうでもいいだろう? しいて言うならば……そうだな、闇の書の完成を望む者だ。 それと、行くのならば急いだ方がいい。あの方向には管理局の魔導師がいる。鉢合わせすれば間違いなく戦いになるだろうからな」 そう言うと、仮面の男は姿を消した。 再び後に残されたデュークは意を決し、グレンダイザーを掲げて叫んだ。 「グレンダイザー、ゴー!」 その叫びとともに、デュークの体を光が包む。そして光が晴れた所にいたデュークは、グレンダイザーの姿になっていた。 但し、デュークが知っているグレンダイザーとは違う点が一つだけ存在する。それは、背中についている翼だ。 これは本来彼がいた世界での戦いで作られる翼『ダブルスペイザー』と同じものなのだが、今の彼にはそれを知る由も無い。 そしてデュークは先程仮面の男が言った方向へと飛び去っていった。 前へ 目次へ 次へ
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その夜、ハレは机の上にノートを置いていた。 「あーあ、社会科見学かぁ」 所在なさげにページをぱらぱらめくる。 「しっかし、先生もいいかげんだよな。どの仕事を見るかは任せるって言うんだからなぁ」 マジックでノートにとりあえず社会科見学と書いておく。 「まあ、手近なところですますから楽で良いけど。母さんに狩りの話でも聞こうかな」 いきなりハレの顎にグゥの拳がアッパーを決める。 「何するんだよ!」 「やれやれ、情けない。こう言うときにこそ普段なら絶対に見れないものを見て見聞を広めるべきであろう」 「また、いいかげんなことを・・・。だいたい、グゥにはそういう普段見れないものの当てでもあるのかよ?」 「ある」 「なんだよ」 「魔法の国の警察官みたいな仕事、というのはどうだ?」 「はぁ?魔法の国って・・・・ネズミの国の警備員ことじゃないだろうな?」 「ちがう、本物の魔法の国だ」 「なにいってんだか」 椅子に座り直して肩をすくめる。 「だいたい魔法の国なんてあるわけがないだろ。あったら行ってみたいよ」 「そうか」 グゥがなにかを取り出す。 背中を向けているハレにはそれは見えない。 「・・・・・・セット・アップ」 「stand by ready. set up.」 聞いたことのある声が聞こえる。 その頃、ミッドチルダ。 「あれ?レイジングハート・・・ここにかけたはずなのに」 なのはが胸のあたりをぱたぱた叩いていつもそこにつけているレイジングハートを捜していた。 「グゥ、なにやってんだよ」 後ろを振り向く。 グゥがどこかで見たことのある杖をハレに向けていた。 「ここんとーざい」 「ALL RIGHT」 杖の先にピンクの光がともり、大きくなっていく。 「ちょ・・・ちょっと、まっ!」 閃光! 爆音! ハレはピンクの光に包まれた。 ミッドチルダ機動第六課本局。 なにか胸騒ぎを感じたなのは歩いていた。 レイジングハートはなのはの胸にある。 玄関前についたとき、そこで見つけたのは地面に上半身をめり込ませて痙攣しているハレと 「よう」 なにかを成し遂げたようなイイ顔で右手を挙げているグゥだった 目次へ 次へ
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大戦略ポータブル2の兵器一覧【GR国】 空(7種21機) Name Category 価格 燃料 弾数 索敵 回避 移動 射程 火力 対空 対ヘリ 対戦 対トラ 対ミサ E-Fgtr2000 T1 戦闘機 6000 47 4 2 30 8 1 110 85 87 0 0 0 E-Fgtr2000 T2 7000 58 38 122 88 91 E-Fgtr2000 T3 8300 66 5 45 135 94 93 Trnd GR.Mk1 戦闘攻撃機 5300 53 4 2 36 6 1 100 70 65 70 60 0 Trnd GR.Mk4 6900 56 5 39 115 75 70 75 65 Trnd GR.Mk4s 7800 58 6 42 135 90 87 85 70 Jgur GR.Mk1B 攻撃機 5000 45 4 2 43 6 1 95 0 0 84 80 0 Jgur GR.Mk3A 5400 50 5 110 90 85 Jgur GR.Mk3B 6200 70 5 140 91 95 Hrir GR.Mk5 攻撃機 5200 40 3 2 33 6 1 100 0 0 66 54 0 Hrir GR.Mk7 5600 43 4 36 115 72 60 Hrir GR.Mk9 6200 46 5 38 130 80 68 Trhd GR.Mk1A 偵察機 4300 50 2 3 21 6 1 50 72 80 0 0 0 Trhd GR.Mk4A 5400 55 4 24 56 74 83 Trhd GR.ECR 5900 62 27 7 62 77 87 AH Mk1Apc 攻撃ヘリ 2900 50 4 2 17 5 1 82 0 80 50 65 0 AH Mk1B Apc 3250 53 20 92 86 54 74 AH Mk1C Apc 3700 57 5 24 102 91 59 80 Lnks AH7 中型輸送ヘリ 1600 55 3 1 20 5 1 80 0 80 50 55 0 Lnks AH9 2000 57 21 95 70 65 70 Lnks AH9s 3300 59 4 23 80 76 77 陸(13種39機) Name Category 価格 燃料 弾数 索敵 回避 移動 射程 火力 対空 対ヘリ 対戦 対トラ 対ミサ Chgr1 主力戦車 3600 41 4 1 40 4 1 130 0 0 80 78 0 Chgr2 4500 42 5 43 145 85 85 Chgr2E 5800 46 47 160 90 93 Wrir FV510 歩兵戦闘車 740 39 6 3 28 3 1 60 0 26 18 77 0 Wrir 改 820 32 7 30 28 20 80 Wrir 2000 900 36 8 32 30 24 Scsn AT105 兵員輸送車 300 43 4 1 26 4 1 46 0 20 31 67 0 Scsn LHD 350 49 21 33 70 Scsn IS 500 54 27 22 35 73 Strk FV102 戦車駆逐車 720 61 6 1 23 3 1 85 0 0 84 21 0 ACLS 1020 64 26 90 88 23 ACLS改 1620 2 95 93 25 AS90 自走榴弾砲 自走砲 1120 35 4 1 24 3 3 95 0 0 67 59 0 AS90 52口径換装型 1400 40 5 26 99 72 63 AS90s LINAPS搭載型 1850 43 6 102 80 72 Stmr (HVM) 対空車両 2800 50 4 3 35 4 3 80 75 80 0 0 0 Stmr (HVM-1) 3100 52 39 85 78 86 Stmr (HVM-L) 3300 56 43 90 81 91 227mm MLRS 自走ロケット砲 2300 40 2 1 20 3 4 115 0 0 55 78 0 227mm MLRS A1 2700 47 3 21 125 70 80 227mm MLRS A2 3100 55 4 23 130 85 82 RAPR 対空ミサイル車両 4300 47 4 3 39 3 4 85 75 80 0 0 0 RAPR MK.2 5900 49 40 89 78 85 RAPR 2000 6600 51 41 96 80 90 GR国輸送トラックⅠ 輸送車両 100 70 4 1 25 5 1 40 0 0 60 65 0 GR国輸送トラックⅡ GR国輸送トラックⅢ GR国補給車Ⅰ 補給車 650 65 4 1 15 4 1 25 0 0 44 55 0 GR国補給車Ⅱ 690 68 17 30 48 60 GR国補給車Ⅲ 720 71 20 35 55 65 GR国歩兵Ⅰ 歩兵 150 50 5 1 22 3 1 30 0 0 5 45 0 GR国歩兵Ⅱ 220 53 6 25 GR国歩兵Ⅲ 360 56 7 28 GR国戦闘工兵 戦闘工兵 310 45 4 1 27 2 1 87 0 0 59 20 0 GR国空挺部隊 360 48 5 31 63 24 GR国特殊部隊 410 51 6 35 3 69 28 ASTR 30 対空ミサイル車両 5600 31 4 3 34 3 4 100 80 80 0 0 0 ASTR 30 MK.2 7100 34 5 38 105 86 84 ASTR 30 MK.3 8000 39 6 41 110 90 90
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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第十話「龍と雷光」 忠勝は優しき雷神、フェイトの武器、バルディッシュによく似た大剣を振る。 振る度に量産型は爆発。残るは数体。 だが、その数体を大剣で一掃しようとはしなかった。大剣を黒い宝石に戻すと。地面へと降りる。 (ヴィヴィオを救うにはやはり突入か・・・!!) 今度は金色の宝石を取り出すとその腕を天に掲げる。目の色から金色から雪の如き白へ。 宝石が光り、杖へと姿を変えた。 「あの杖って・・・!」 「シュベルト・・・クロイツやて・・・・!?」 その杖は最後の夜天の王、八神はやてが手に握る杖「シュベルトクロイツ」に似ていた。 忠勝は両手で杖を構えると十字の先の部分から白い稲妻が発生。稲妻は異様といえるほど大きくなる。 刹那、その大きすぎる稲妻は量産型とガジェットドローンを巻き込みながら聖王のゆりかごへ迫る。 案の定展開してあった結界にぶつかる。それでも忠勝は諦めない。叫び声にもよく似た鋼の唸るをとが響く。 大きな爆発の後結界が一箇所だけ見事に割れ、潜入できるほどの穴ができていた。 「・・・・忠勝さん!なのはちゃんとヴィータちゃんと一緒にゆりかご内部へと潜入!フェイトちゃんは先ほどの指示通りにスカリエッティの研究所へと潜入!」 指示された皆は頷くと、それぞれの場所へと飛ぶ。戦いはまだ、続く。 「ぐはぁぁぁっ!」 その戦場から少し離れ、吹き飛ばされたのはエリオだ。壁をぶち抜いてビルの中で倒れこむ。 吐血するエリオだがガリューは容赦なくエリオの腹に蹴りを入れていく。 「ぐふっ・・・!!」 「エリオ君っ!きゃあぁ!」 エリオの方に注意が逸れたところをルーテシアにつかれ、攻撃されるキャロ。 しかしルーテシアやガリューの方も優勢とはいえ次第に体力を奪われていく。そう、エリオとキャロのガッツで。 だが召喚のほうに問題がある。フリードリヒは今巨大な龍となってルーテシアの召喚虫を蹴散らしているがキリがないのだ。 おまけに地雷王という巨大なのもいるし、ルーテシア達の後ろでヴォルテールと戦っている白天王というのもいる。 「く・・・!」 エリオは槍を杖代わりにして立ち上がるがすでに満身創痍。 キャロも同じような状態である。 「ルーちゃん!私のお話を聞いて!」 「・・・消えて・・・!!」 ルーテシアは再び魔力を放つ。魔力に襲われ吹き飛ぶ二人。その足元には蒼い渦だった魔方陣が。 「え・・?キャロ・・・・これ!!」 「魔方陣・・・!?」 その瞬間晴天のはずの空から稲妻が落ちる。 稲妻の落ち方は尋常ではなく、何本もの稲妻が一本に集結、大きな一本となって落ちてきたのだ。 「Ha!楽しそうなpartyじゃねぇか・・・・!俺も混ぜろや・・・・・!」 そこには、一人の蒼い侍が立っていた。 蒼い侍は腰に挿していた六本の刀を片手に三本ずつ構える。 「さぁ行くぜぇ!イカレたパーティの始まりだ!Let s rock!!」 ━━━━"The dragon without the right eye" runs(「右目の無い龍」は走る。) ━━━━The sword that it is called "the nail of the dragon" to grasp in the hand.(その手に握るのは「龍の爪」と呼ばれる刀。) ━━━━"The dragon" infringes upon an enemy as far as there is a fight there and cuts it down.(「龍」はそこに戦いがある限り、敵を蹂躙し、切り倒す。) ━━━━Orbit of the lightning that it is blue that a nail weaves. But the blue does not have the cloudiness.(爪が織り成すのは蒼い稲妻の軌道。だが、その青に曇りはなく。) ━━━━And the dragon gives its name.(そして龍は名乗る。) 「この奥州筆頭、伊達政宗を楽しませてくれるヤツぁ、ここにいねぇのかい?」 奥州の龍、伊達政宗推参、その背後には斬り捨てられた召喚虫の群れ。 だがその中の一匹が立ち上がり、腕を振るう。腕は当たることなく、「龍の右目」に防がれた。 「政宗様、背中が隙だらけとあれほど・・・・!!」 ━━━━To a dragon without the right eye, there are the right eye and a man to be able to invite.(右目の無い竜には、右目と呼べる男がいる。) ━━━━The man did not have the nail of the dragon, but there was scathing brightness of the eye named the sword.(その男に龍の爪はないが、刀という名の鋭い眼光があった。) 「あぁ?俺の背中はお前が守るんじゃなかったのか?」 「無論、この片倉小十郎。命を賭けて政宗様の背中をお守りいたします!」 「Coolじゃねぇか。それでこそだ。」 槍使いの少年と龍使いの少女の前に現れたのは、一匹の「龍」だった。 「小十郎、俺は黒いあいつと戦う。他のは任せたぜ。」 政宗はガリューへと目標を変え、走り出す。すぐにぶつかり合う刃と刃。ガリューは背中から生えた触手で政宗の腹を打ち、吹き飛ばす。 ビルに突っ込む政宗だが体勢を立て直してまた突撃。顔は、笑っていた。 「やれやれ、困ったお方だ・・。さて・・・嬢ちゃん、俺はできればアンタと戦いたくないんだが・・・?」 小十郎は刀を肩で背負い、ルーテシアを見据える。 ルーテシアは小十郎の問いかけにも答えず、魔力の球を撃ち出す。 素早く刀を前に突き出して球を斬る。真っ二つに割れた球はかなり後方で爆発。 「こっちも困ったやつだ・・・。流石に斬るわけにはいかねぇけどな。」 そう言って刀を反す。にらみ合いが続く中で何かを思いついたように後ろにいるエリオに声をかけた。 「おい、そこの坊主。」 「は、はいっ!?」 「ちょいと手を貸してくれねぇか?作戦があってな・・。」 小十郎はエリオに背を向けたままできるだけ小声で話す。 「Hey!よーく耳を澄ませな、俺の心臓はここだぜぇ?」 自分の左胸を親指で指し、ガリューを挑発する。ガリューはそんな挑発に乗るほど短気ではない。 じっとしてたら政宗が接近、三本の刀で斬り上げる。 「!」 攻撃を防御するガリューだが政宗の攻撃は終わりじゃない。そのまま空中に上がり、もう片方の三本の刀を振り下ろしてくる。 「DETH FANG!!」 その攻撃も防御したが明らかに先ほどの斬り上げより重い。すこし手が痺れ、震えている。 自分も負けてはいられない。触手をまた政宗の腹に打ち込むと今度はそのまま接近。手首についた刃を突き出す。 ギリギリのところで避けたから兜の緒が切れ、兜が地面に落ちる。 「ヒュウ、やるねぇアンタ。」 「・・・・。」 また刀と刃のぶつかり合いへと変わるが、直ぐに両者は離れた。 政宗は片手に六本の刀を持ち、ガリューへと接近。六本の刀を横に凪ぐ。 「PHANTOM……」 「!!」 横凪ぎは今までの政宗の攻撃を遥かに凌ぐ重さ。ガリューの体が浮いた。政宗はジャンプし、ガリューへと迫る。 手には六本の刀。六つの斬撃が、ガリューの体に向けて振り下ろされた。 「DRIVE!!」 その四肢は宙を舞い、地に落ちる。刀を仕舞い、倒れているガリューへと言葉を送る。 それは一言だけだったが今の気持ちを伝えるには十分な言葉。 「楽しかったぜ。」 「……というわけだ。いけるか?坊主。」 「はい、やってみます。」 エリオは立ち上がり、ストラーダを再び構える。 小十郎はその隣に立ち、腰を落とす。ルーテシアは何もしないままだ。 静寂が場を支配する。何も動かず、聞こえるは風の音と自らの心臓の音。静寂は十秒、五十秒、一分。長く続く。 先に動き出したのは小十郎だった。一歩踏み込み、二歩目で地面を思い切り蹴る。 刀を前に突き出して蒼いオーラを纏いながらルーテシアに突進していく。 「穿月!」 穿月はルーテシアを捕らえることはなく、横を通り過ぎる。 「うおぉぉぉぉ!」 小十郎のあとに続きエリオがストラーダを構え、突進してきていた。ルーテシアは思わず飛び退くがエリオは止まる。 ルーテシアが飛び退いた先に小十郎がいた。刀を上に掲げ、肩と首を叩くと気絶。その場に倒れこんだ。 「今は静かに眠れ・・。」 刀を鞘へと納めると同時に政宗が近づく。どうやら終わったようだ。 エリオとキャロが近づき、少し戸惑いながらも二人の武将の前に立つ。フリードリヒもキャロの近くに降りてきて元の小さい竜へと戻り、 ヴォルテールの方も決着がつき、消える。白天王を含めた召喚虫はルーテシアが気を失ったと同時に消えてしまったみたいだ。 「あの、ありがとうござい・・・」 「おっと、礼はまだだ。オメェらにはまだ行かなきゃならねぇ所がある。だろ?」 言い切る前に政宗が喋る。言葉に対してエリオとキャロが頷くと政宗と小十郎は顔を見合わせて微笑。 フリードリヒの上にルーテシアを乗せ、四人はゆりかごへと走り出した。 戻る 目次へ 次へ
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今から150年以上前…あらゆる次元世界に戦いが蔓延していた頃、ミッドチルダに三人の魔導師が存在した。 三人の魔導師は、ミッドチルダ南西部のとある地方において謎の石を発見する。 その石は真っ二つに割れたかのように欠けていて、外見はただの石であった。 …しかし石の内部には謎のエネルギーが残留しており、更にそのエネルギーを解析すると、 エネルギー内には魔法技術や質量兵器技術、果ては様々な世界の歴史など膨大な知識が保存されており、 中には伝説級のアルハザードの技術や情報、神話級の魔法技術や情報が蓄積されていたのである。 …これらの情報を知った三人の魔導師は、ある野望を抱く事となる。 この情報と技術を応用・併用すれば、この次元世界を纏め上げ事すら不可能ではない。 それは正に神の所業、つまり我々は神になる事が出来る… 三人の魔導師は互いに協力し合い、神になる為の道を歩み進む事となった… リリカルプロファイル 第二十八話 角笛 …その後、三人の魔導師は石の情報を基に次元世界を纏め上げ平定、 75年後にミッドチルダに時空管理局を設立し、三人は最高評議会と名を変え表舞台から姿を消す。 設立から月日が経ち、石を中心とした巨大なデータベースを保有した超巨大次元船を設立、 その後次元船は本局と名を変えデータベースもまた無限書庫と名を変え現在に至るのであった。 そして現在…ミッドチルダに東部の森に存在する洞穴の前に三人の人影が存在する。 ヴェロッサ、シャッハ、アリューゼである、彼等はなのは達がセラフィックゲートに向かっている頃 スカリエッティの居場所兼ラボである聖王のゆりかごへの潜入と魔法技術のルーンを解除の為に、 ティアナによって齎されたディスクの情報を頼りに此処へと赴いたのである。 「…しかし来たのはいいが、どうやって潜入する?ルーンって奴で存在次元を曲げられてんだろ?」 「勿論、此方にもそれなりの用意はあるさ」 アリューゼの疑問にヴェロッサは答えると、懐から液体が入った二つの瓶を取り出す。 ルシッドポーション、これは無限書庫に記載されていたルーンの情報を基に、一時的に存在次元をずらし透明にするものであるという。 つまりはルーンが起動している時と同じ現象を作り出す代物なのだが、効果は五分程度であるのが弱点であると付け加える。 「でも五分もあれば僕のレアスキルで潜入することは可能だからね」 そう言うとヴェロッサの下に半透明の猟犬が多数姿を現す、ウンエントリヒ・ヤークトと呼ばれるヴェロッサの魔力を用いて 目視や魔力深査に対し高いステルス性を誇る猟犬を作り出すレアスキルであり、 更にコンピュータにアクセスしての情報収集や、障害物を通り抜けたりする事も出来るのである。 そして今回はルシッドポーションを猟犬に振りかけることで、効果を与え侵入を可能とするものであった。 「でも…君が潜入するとはねぇ」 「何だ?まだ文句があんのか?」 …本来アリューゼはこのような任務は得意ではない、寧ろシャッハの方が能力的に適している。 しかし今回はアリューゼたっての希望でヴェロッサ達に嘆願し、シャッハに代わって潜入する事になったのだ。 「まぁいいさ、とりあえずがんばって」 ヴェロッサは一つ挨拶を交わすと開始時間となり、アリューゼは受け取った瓶の中身を飲み干し ヴェロッサは猟犬達に振りかけると徐々に姿を消し見えなくなる。 だが本人達は消えた事が分からないようなのであるが、五分しか保たない為に急いで洞穴を通る。 …比較的長い洞穴を駆け足で抜けると広い空洞に当たり、中には巨大な船の姿がある。 「これが…ゆりかごか……」 〔惚けてる時間はないよ〕 猟犬からヴェロッサの窘める言葉が響く中で、入り口らしき場所を見つけると 猟犬は早速ハッキングを仕掛け、直ぐに扉を開けると飛び込む形で乗り込み直ぐ様扉を閉める。 「大丈夫なのか?」 〔うん、痕跡は残していないからね〕 直ぐにバレるようじゃ査察官は務まらないと猟犬から笑い声が響く中で、 ヴェロッサは直ぐに真剣な口調へと変え此処から先は二手に別れようと提案する。 自分は引き続きルーンの解除とスカリエッティの居場所の詮索 アリューゼはアリューゼが望む事をしてくれと説明を終える。 「気付いていたのか……まさか!てめぇ思考捜査を!?」 「…君は簡単に顔に出るんだよ」 嘆願の頃からアリューゼは何かを胸に秘めていたのが分かっていた、だからシャッハも快く代わってくれたと話すと 頬を掻いてばつの悪そうな顔をするアリューゼ、それを後目に猟犬はゆりかごに放たれ、 アリューゼもまた自分のすべき事の為、先に進むのであった。 場所は変わり翌日の朝、此処はミッドチルダ北部聖王教会から更に北に位置する雪に覆われた巨大な山 此処は年中雪に覆われており、梺の村では大雪山と呼ばれている場所でもある。 その極寒の地の奥にある木々が大茂る森の中に、一カ所だけ切り取られたかのように草木が生えていない場所がある。 其処には青い線で描かれた魔法陣が刻まれており、その前に一人の女性が立っていた、メルティーナである。 メルティーナは無限書庫の情報によりこの場所を知り、なのは達を送った後此処へ赴いたのだ。 そしてメルティーナは徐に魔法陣に手を伸ばし触れると、無限書庫で得た詠唱を始める。 「…極寒の地にて眠りし冷厳なる魔狼よ…我が前に姿を現せ!!」 すると魔法陣が輝き出し、中央から巨大な狼が姿を現す。 メルティーナが呼び出した狼は、かつてこの地域で信仰されていた伝説の狼なのであるが 傲慢な態度と我が儘な行動で誰にも従わず好き勝手に暴れまわり、 結果的に人々から畏怖の念で見られ此処に封じられた存在なのである。 そんな狼の体は大きく氷のような青い体毛に覆われ、首下には金色の首輪が付けられており、 目は赤く輝き口から白い息が漏れ出す中で、狼はメルティーナに問い掛ける。 「俺を呼び出したのは貴様か?」 「そうよ、私の名はメルティーナ、率直に言うわ、アンタの力が欲しい!!」 メルティーナは狼に指を指して答えると、狼は大声を上げて笑うとメルティーナの申し出を断る。 狼曰く…俺は俺の為に生きており、誰かの…ましてや女に使役されるつもりは無いと、傲慢に満ちた表情で答える。 だがメルティーナも負けてはおらず徐に左手を狼に見せると其処には、金色の絹糸のような紐で出来た腕輪が付けられており、 その腕輪を見た狼の表情が一転する。 「貴様!何故それを…グレイプニルを手にしている!!」 メルティーナが身に付けている腕輪の名はグレイプニル、狼の首に付けられた金色の首輪と同じ材質で作られた封印の切っ掛けとなった代物である。 …かつてこの地を訪れた高僧が片腕と引き替えに取り付けた物で、この腕輪を身につけた者に逆らう事が出来ず それにより狼は封印され、腕輪はこの地に安置されていたのだが、管理局が腕輪をロストロギアと判断した為、場所を本局へと移し 永らく本局の保管庫内で埃を被っていたところを、無限書庫の情報によって知ったメルティーナがパクっ………借りたのである。 「これさえあればアンタは私に逆らえない!」 メルティーナは狼以上に傲慢な態度で挑むと歯噛みしながら睨み付ける狼。 しかしどれだけ悔しがってもメルティーナに逆らうことは出来ない 何故ならグレイプニルは狼の動き全てに作用し、封じられ果ては意志に背いた形で動きを操られしまうからである。 それを知っているからこそ、メルティーナはあの様な横柄な態度をとれるのである。 ……尤もメルティーナ自身の度胸も関係してはいるのではあるが…… 「ぬぅ……仕方あるまい…しかし!寝首をかかれる覚悟はあるのだろうな!!」 「ウルサいわね!アンタは私の飼い犬になっていればいいのよ!!」 狼の威圧もメルティーナは横暴な態度と言葉で一刀両断し 口を紡ぐ狼を見て更に見下すメルティーナであった。 場所は変わり此処はゆりかご内の施設、中ではナンバーズ達が最終決戦に備えて模擬戦を行っており、 その中には戦闘スーツで身を飾ったギンガの姿もあり、すっかり馴染んでいる様子であった。 「では各自励むように…以上!!」 トーレの掛け声を合図に解散するとチンクとトーレは最後の調整として話し合い始め ギンガはディエチと共に食堂へと赴こうとしていると、そこにノーヴェとウェンディが姿を現す。 「どうしたの?二人とも」 「二人に質問ッス!どうやったら二人みたいなコンビネーションが出来るんッスか!!」 今回の模擬戦の中でギンガはディエチと組み、ノーヴェはウェンディと組んで行った。 結果は一目瞭然でギンガの動きに合わせてディエチはウェンディの動きを牽制 ノーヴェは真っ向勝負をかけるが、ギンガの動きはフェイントで、実はウェンディを狙っており ノーヴェはすぐさま追おうとしたところをディエチに出鼻を挫かれ ウェンディは焦りながらエリアルショットにてギンガを迎撃しようとするが難なく回避 ライディングボードごとウェンディを叩き付け吹き飛ばし、一方でノーヴェはディエチの下へ向かおうとするが、 ディエチは既にイノーメスカノンからスコーピオンに持ち替え迎撃、ギンガ達の勝利で幕を閉じたのである。 二人の息の合った動きと更に言えばギンガの能力はノーヴェと酷似している為に、参考として聞きに来たのである。 すると二人の向上心に感心したギンガは快く応じ、その中で休みたいのに引っ張り出されるディエチであった。 その頃レザードの自室では席に座ったレザードがナンバーズ達とギンガの仕上がりを確認していた。 仕上がりは良好で、特にギンガの洗脳は今までゆりかごで暮らしていたかのように順応しており、 順応こそが最大の洗脳効果である事を証明していた。 一方で戦闘面での仕上がりも良好で並の魔導師や不死者では相手にならない程まで成長している…と践んでいると、 後方から助手であるクアットロが資料を持って話しかけてくる。 「博士!強化型の不死者の量産の目処が付きましたよぉ」 「それはよかった、では見せて貰いましょうか」 レザードはクアットロが手にした資料を受け取ると流し読みする。 資料にはドラゴントゥースウォーリアを始め、自爆を主としたウィル・オ・ウィスプ、後方支援に適したイビル・アイ、 三体の獣を合成したパラミネントキマイラ、高い回避率を持つグレーターデーモンなど 今までとは全く異なる強力な不死者の量産成功が綴られており、 流石のレザードも眼鏡に手を当て喜びの笑みを浮かべ、それを見ていたクアットロもまた笑みを浮かべていると レザードのデスクのモニターに目がいき、つい質問を投げかける。 「博士?これは?」 「ん…これですか?対エインフェリア用の強化プランですよ」 三賢人が造り出したエインフェリアは高性能で、多数の不死者で相手をしたとしても焼け石に水の状態は目に見えている、 その為、質に対し量で適わぬのなら質を上げるしかないという考えに至ったレザードは、 スカリエッティと共同でナンバーズのレリックウェポン化を決定したのだという。 かつてレリックウェポンに使われているレリックは危険なロストロギアであったのだが 二人のレリックウェポンやベリオンなどのデータにより、安定した魔力を供給することが出来る 安全な高エネルギー資源へと生まれ変わった為、今回の強化プランを実行出来たのだという。 レリックによる強化は身体強化が主なのであるのだが、 トーレはインパルスブレードの出力強化、チンクはヴァルキリー化の際の能力向上 セインはフィールドを用いた対消滅バリアを展開し、バリア・フィールドに覆われた場所もダイブする事が出来るようになり セッテはブーメランブレードをクロスに重ね手裏剣のような形で投げれるようになった事と、回転速度・精密度などの向上 オットーは更なる広域攻撃化と結界の強化、ノーヴェは失った右足の強化と 両足に加速用のエネルギー翼を展開する事でA.C.Sドライバークラスの突進力を実現させ ディエチは超遠距離の精密射撃の実現と弾頭の軌道操作能力 ウェンディはセインと同様の対消滅バリアをライディングボードに展開させる事が出来るようになり ディードはツインブレイズのエネルギー刃を伸ばすことが出来るようになり、四階建てのビルなら両断出来る程の能力などが加わるのだという。 「へぇ~それで博士私は?」 「……貴女は前線に出ないでしょう?」 クアットロは不死者及びガジェットの操作・制御を主にしている故に 強化プランは必要無いと肩を竦め答えるレザードに対し、心なしか残念そうな顔をするクアットロであった。 場所は変わりスカリエッティの研究施設では、ゆりかごの調整に勤しんでいた。 そんな施設の中で二つの似つかわしくない物が存在している、 一つは左手用で指先が鋭い金属で出来たグローブ型のデバイスと 刀身が艶のある黒に禍々しい印象を感じる飾りが付いた鍔と片手用に短くなった柄の片手剣である。 剣の名は魔剣グラム、かつて手に入れた妖精の瓶詰めを基に錬金術により変換した オリハルコンを材料に造られた剣型アームドデバイスである。 恐らくこの世界で、レザード以外にアーティファクトを元にしたとはいえ、オリハルコンを作成したのはスカリエッティだけであろう。 そしてもう一つは防と縛に特化したアームドデバイスで、此方は流石にオリハルコン製ではない。 その二つのデバイスを目にしたウーノはスカリエッティに質問を投げかける。 「ドクター?これは一体……」 「あぁ、私専用のデバイスだよ」 今回の戦闘は総力戦といっても過言ではない、自分が育てた“愛娘”達が負ける事はないと思うが 万が一乗り込められた場合を想定して造ったと語ると ウーノは胸に手を当て大声を上げてスカリエッティに訴えかける。 「大丈夫です!もし攻め込められたとしても、私が命を懸けて―――」 「いや…ウーノにはもっと重要な任務がある」 そう口にすると突然席を立ち、徐にウーノの唇に優しく手に掛け顔を近づけ、スカリエッティの突然の行動に顔を赤らめ目線を逸らそうとするが、 スカリエッティの澄んだ瞳を避ける事が出来ず、じっと見つめ続けているとスカリエッティは静かに甘い吐息混じりで言葉を口にする。 「……私の子を孕め」 ウーノは他のナンバーズ、特に初期の三人の中で体の作りは人に近く、子供を孕む様に出来ている。 それに…もし自分が消える事になった場合、自分が生きた“証”を残しておきたい。 その一つは“歴史”であり、もう一つは“遺伝子”である、 そして“証”の内の一つである“遺伝子”をウーノに受け取って欲しいと告げる。 ウーノはスカリエッティの言葉を一字一句聞きながらもその瞳は逸らさず 話を終える頃にはウーノの瞳は妖美に満ち、徐に上着を脱ぎ捨て、たわわに実った果実を晒し出すと スカリエッティに抱き付き、更に首に手を回して見つめ合うと、甘い吐息を吐くのように応えるウーノ。 「…私の体はドクターのモノです……」 その妖艶な笑みと口調にスカリエッティの理性が飛び、口付けを交わしながら実った果実に手を伸ばし 倒れ込むように押し倒して、二人の濃密な時間が流れ始まるのであった…… 場所は変わり翌日の夜、聖王教会の会議室に対策本部を設置したクロノはユーノを始め本局、 ゲンヤを始めとした地上本部と共に今後の対策を練っていた。 しかしその面子の中にカリムの姿はなかった、彼女は自室にて翻訳された予言を読み返していた。 予言の大半を読み返していると一つの文に目が行く、それは―― “神々と死せる王が相対する時、神々の黄昏を告げる笛が鳴り響く”である。 神々とは恐らく神の三賢人の事であろう…しかし死せる王とは一体誰のことを差すのであろう… 歪みの神はレザード、無限の欲望はスカリエッティというのは、既に明らかにされている。 今回の事件の張本人達が次々に明らかにされていく中で、死せる王が誰なのからない… 故に不安は未だ拭えず眠れぬ夜が続いているのであった。 翌日の昼、今日も朝から議論が交わされている中で一報が届く。 それは神の協力を得る為に向かったなのは達機動六課前線メンバーが、今し方帰ってきたというものである。 その一報を聞いた対策本部はざわめき始める、なのは達は神の協力を得られたのか?それとも敗北による撤退だったのか? いずれにしろ報告する為ここに顔を出すだろう…クロノがそう考えていると対策本部にノック音が響く。 クロノは返事をするとなのは達が部屋へと入り、その顔は今までとは異なる程自信に満ちていた。 その表情に淡い期待を胸に秘めながらクロノはなのは達に問い掛ける。 「先ずは無事に帰って来て何よりだ……それで神の協力を得られたのか?」 するとなのはとフェイトは互いに目を合わせ頷くと、腰に添えてある杖を見せる。 この杖は神の協力を得た証拠であると話すと、対策本部は一斉に沸き立ち 歓喜に満ちる中でユーノがなのはに抱きつきながら激励を込める。 「やったね!なのは!!」 「ちょ!?ハシャぎ過ぎだよユーノ」 そう言ってなのはは顔を赤らめ照れていると、その様を見たはやてが出発前の事を思い出す。 …そうだ!無事生還したらなのはと共にお祝いの赤飯を炊かねばならんかった… はやては歓喜に満ちた対策本部をこっそり抜け出して、食堂にある厨房へと赴く、 そして暫くすると対策本部には赤飯に鯛の尾頭付き、更にビフテキにカツカレーなどがズラリと運ばれて来た。 今回の祝杯と今後の栄喜を養う為に、はやて自らが腕を振るい更に監修して用意したようである。 対策本部は一時宴会場と変わり、飲めや歌えやの大騒ぎとなっていた。 翌日、場所は変わりスカリエッティの指揮の下、ゆりかごの最終チェックが行われていた。 ゆりかごは当初、激しく損傷していたのだが、長い時間をかけて修復を完了 そして動力炉に繋がれた聖王の遺伝子を所有したベリオンによる動力炉の起動確認も完了し、 更に余ったレリックを使う事で動力エネルギーを手にする事が出来た。 後はこの最終チェックを完了させればゆりかごを起動させる事が出来る、 すると其処にレザードとクアットロが姿を現す、レザードの方は既に準備が完了しており、 後はスカリエッティの演説と“ゆりかごの主”の合図を待つばかりであると。 その時である、いつもいる彼女がいない事に気が付いたレザードはスカリエッティに問い掛ける。 「おや?ウーノの姿が見当たりませんが?」 「あぁ、ウーノは船を下りたよ」 スカリエッティは最終チェックを行いながら淡々と答える。 ウーノには重要な任務を与えた、しかしそれは此処ゆりかご内で出来る事ではない為 彼女を船から降ろし任務に専念して貰ったのだと語る。 その為、ゆりかご内の防衛及びガジェット・不死者の官制はクアットロに全て任せると告げると ウーノの代わりとはいえ責任ある任を受け、笑みを浮かべ喜ぶクアットロを後目に、逆にスカリエッティが質問を投げ掛ける。 「ところで“聖王”の方はどうなんだい?」 すると眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべると話し始める。 “聖王”には“聖王”としての自覚を持たせ、更に王の印たる二つのレリックを取り付ける事により、 “聖王”として完成を迎え、今はゆりかご内に存在する王の間にてその時を待っていると。 …ただ、今の“聖王”はかつての姿とは異なり“貫禄”が身に付いていると語る。 「ほう…それはすばらしい、では早速行こうか」 レザードの会話の中で最終チェックを済ませたスカリエッティは席を立ち、 王の間へと向かうと、あとに続くレザードとクアットロであった。 そして夜…聖王教会の対策本部にはまだ灯りが灯っており、昼夜問わず議論が重ねていた。 その時である、議論を提示するモニターにノイズが走り映像が切り替わると、スカリエッティを映し出した。 この電波ジャックはミッドチルダ全土に及び、なのは達は待合室でその様子を観察していると 映像のスカリエッティは狂気に満ちた表情でゆっくり口を開き始める。 「ミッドチルダに住む諸君…久し振りだね、私を覚えているかい?」 …誰もが忘れる訳が無い、地上本部壊滅の一端を担い世界を破滅に導く存在を… そんなミッドチルダ全土の思いを後目にスカリエッティは話を続ける。 …いよいよ彼等は動き始める、今までの時間はミッドチルダを壊滅させる為の準備期間であったと。 「見たまえ!これが我々の戦力だ!!」 すると映像は引き絵に変わり、画面には夥しい数のガジェットと不死者が犇めいており、 ガジェットには新たな武装が追加され不死者も今までとは異なる凶悪さが垣間見てとれた。 スカリエッティ曰わくガジェット及び不死者はこれで全部なのではなく 至る場所に量産施設が存在し、其処から無数の軍勢として姿を現すと饒舌に語る。 「だが…コレだけではない、我々は遂にベルカの王を復活させたのだ!」 スカリエッティは両手を広げ宣言すると映像は王の間に切り替わり、 左右にはナンバーズ達が立ち並び、その列にギンガの姿も存在していた。 一方でギンガの姿を見かけたスバルとゲンヤは思わず目を見開き、 スバルに至っては両膝をつき、そのいたたまれない姿にティアナはそっと肩に手を置く。 しかしその光景を後目に映像は続き、奥の王の座が映し出されると其処には一人の女性が座っている。 その女性の年齢は17歳前後で服装は黒を基調としたバリアジャケットと騎士甲冑を合わせた造りの服に 髪をサイドポニーで纏め、その髪型は普段のなのはと酷似していた。 そして女性は目を開くと左右が紅玉と翡翠色をしたオッドアイで、その目を見たなのははヴィヴィオである事を確信した。 …いや確信せざるを終えなかった、あの瞳を見る前からそうではないかとなのはは感じており、 実際にそれが合っていた事に対し、流石のなのはも動揺を隠せずいると 映像のヴィヴィオが立ち上がり一つ間を置いて言葉を口にする。 「…私の名は聖王ヴィヴィオ、このゆりかごの主にしてベルカの王である」 ヴィヴィオの口から放たれるその言葉は威厳に満ちており、その佇まいは風格すら感じる。 そしてヴィヴィオは自分達の目的を話し始める。 「我々の目的はこのミッドチルダを土台に我々の世界…新たなベルカを創り出す事にある」 元々古代ベルカは此処ミッドチルダに侵略する為に来た、 故に本来の目的を知ったヴィヴィオはミッドチルダと言う“土台”の上にベルカを設立すると語る。 その言葉に苦虫を噛むような表情で映像を見るはやて。 「冗談やない!私等は肥やしやない!!」 はやては対策本部の机と強く叩き吐き捨てるように言葉を口にすると、それに呼応するように周りの人々が一斉に頷く。 一方で、はやては同じく演説を聞いていたカリムの顔を見る、するとはやての行動に気が付いたカリムははやての顔を見てにこやかに微笑む。 「安心してはやて、幾ら彼女が聖王だったとしても教会は協力を惜しみません」 …確かにかつてベルカはミッドチルダに侵攻した、しかし今は友好的な繋がりが出来ている、 それを捨ててまで聖王に…ましてやスカリエッティにつく事は有り得ないと断言するカリム。 しかしヴィヴィオの演説はまだ終わってはいなかった。 「この世界の住人に出来る事…それは速やかに死ぬ事、抵抗は無意味…死を受け入れなさい」 そうすれば苦しむ事なく生から脱却できると言葉にすると、 間髪入れずに老成の声が辺りに響き渡る。 「…いつからミッドチルダは貴様達のモノになったのだ?」 するとモニターが二分割され、其処にガノッサが映し出されるとクロノは歯噛みしながら睨み付ける。 ガノッサの周りにはエインフェリア達がずらりと並び立ち、ガノッサは杖で床をつつくと話し始める。 「ミッドチルダに住む諸君、いよいよ時は満ちた!貴様等が我々の礎となる為のな!!」 すると映像は海上を映し出し、ルーンを解除したヴァルハラがゆっくりと姿を現す、 …今までの潜伏は戦力を整える為のものであり、既にそれが揃った今だからこそ行動に移すと息巻いた様に語るガノッサ。 「見よ!これが我々の切り札である!!」 ガノッサは杖を高々に上げると映像が切り替わり、二つの月が映し出され、その間に何かが出現する。 其れは巨大な赤い水晶体のようなものに両端には竜の翼を象ったものがあり、 そして水晶体の中心からは管が何本の伸びており、ラッパのように先端が広がった砲口に繋がれていて、砲口には竜を象った飾りが付いていた。 人々がその存在に困惑する中で、クロノの端末に独自の諜報員からのデータが今し方送られてきており、 それに目を向けると驚愕し、思わず映像に目を向け声を荒らげた。 「奴らなんて物を!!!」 「さぁ終末を告げる笛の音よ!今こそ奏でてやろう!!」 ガノッサは高々と上げた杖を振り下ろしながら宣言するのであった。 …場所は変わり此処はミッドチルダ西部エルセア地方、人々はスカリエッティと三賢人の演説に聞き見入り 空は満天の星空で雲が一切無く星々が人々の頭上で力強く輝く頃、 一つの赤く輝く星の光が徐々に輝きを増し更に巨大化すらしていき、 それが映像に映し出されている攻撃であると気が付いた頃には辺り一帯を赤く染め上げ 攻撃が大地に突き刺さると一気に広がりを見せ、その光はエルセア地方全土を包み込み 赤い光が一筋の光となって消滅すると、エルセア地方は巨大なクレーターとなってミッドチルダの地図から消滅したであった… この一部始終はミッドチルダ全土に流れており映像には巨大な魔力砲を撃ち終えた砲口が映し出されている。 「これが我々の切り札、その名もドラゴンオーブである!!」 ドラゴンオーブ、二つの月の軌道上に設置された巨大魔導兵器で、 左右の二枚の翼で月の魔力を受け止め、中央の赤い水晶体によって増幅・圧縮、 そして砲口にて加速され撃ち放ちその威力は一目瞭然、常軌を逸していた。 そして今の今までその存在に気が付かなかったクロノは八つ当たりするように机に向かって拳を振り下ろす。 「情報が………遅すぎる!!!」 一方で現場や他の地域はアリの巣をつついたかのような大騒動に発展しており、 その情報は対策本部にまで伝わっており、ゲンヤの指揮の下、対応を取り始める中 映像には未だガノッサとヴィヴィオが相対するように映し出されていた。 「我々はこの力でミッドチルダを破壊し全ての憂いを晴らし神の道を行く!!」 「そうはさせない、この世界は我々の世界の礎として必要な物である、破壊などさせてたまるか!!」 互いは相対しながら睨み合い、宣戦布告すると両者の映像が消え、 その中でカリムは一人、予言の一文を思い返していた。 …神々と死せる王が相対する時、神々の黄昏を告げる笛が鳴り響く…と…… 前へ 目次へ 次へ
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第四話「懸念」 12月2日 2136時 海鳴市 セーフハウス 「どーーーーなってんのよ!」 先ほど起きたことに対してメリッサ・マオ曹長は困惑していた。 人が空を飛び、ASと切りあい、変な光線が空に向かって放たれたらヴェノムも 空を飛んでた護衛対象も姿を消した所を目撃したのだから当然と言えば当然だ。 「分からん。俺も目撃はしたが常識を超えていた。」 マオ・クルツ・宗介の3人はもう5回ほどお互いの頬をつねった。 その痛みが、これが紛れも無い現実だと伝えてくる。 「正直言って、この街でなにが起きてるか分からないわ。ただ確実に分かることは 私達の常識外のことが起きている事とアマルガムが絡んでるということだけね。」 空を飛ぶ人のことや夜空に放たれた光線は置いといて、現実的な問題はヴェノムについてのことだ。 ラムダ・ドライバ搭載型ASが現れた以上、M9でも荷が重い。 あと3機、それに装備が充実していればの話である。 今回の護衛任務には40ミリライフル砲と単分子カッターしか持ってきていない。 「対抗するには、アーバレストを寄越してもらうしかないのではないか?」 「そうねぇ。一応言ってみるとするか。」 支援要請のため衛星通信機に向かうマオ、宗介とクルツはまたお互いの頬をつねっている。 「ソースケよ。M9の映像記録を見なけりゃ誰も信じないだろうな。 いや加工された映像だと思うだろうぜ、普通」 「肯定だ、現在圧倒的に情報が不足している。この街で何が起こってるか知る必要がある。」 つねったまま今日の戦闘の映像記録のことを話し合う2人 「ところで、そろそろ手を離せよ。」 「そっちこそ離したらどうだ?」 お互い一向に離す気配は無い、むしろつねる力が強くなってきている。 「止めな。状況がよく分からないし、提出した映像も訳わかんないものであることは事実よ。 アーバレストについては追って返答するだって、なんか研究部の連中が来てるらしいわ。」 「研究部がかよ。あいつらの研究は俺達の生存率を上げる為のものじゃねえのかよ。 率先して足引っ張りやがって。」 「仕方ないわよ。ラムダ・ドライバの研究はミスリル全体の生存率を上げることになるんだから それに先日の香港の事件のときにラムダ・ドライバが複数回発動したでしょ? 機体への影響とかについてじっくり調べたいんだって」 アーバレストは、確かに香港事件でも上層部は出し惜しみをした。 ミスリル唯一のラムダ・ドライバ搭載機である、あれを失うことは出切るだけ避けたいのだろう。 もしくは、失っても代替が利くように研究しておく必要がある。 「そうか。しかし、あの無人地帯ができない限り奴等もそう簡単に手を出すこともできんだろう。 気をつけるべきは、日常生活における拉致だ。」 貧しい装備で戦うことは慣れていたし、M9でも戦い方次第ではヴェノム相手であっても何とかなる。 宗介の言葉に他の二人は頷き、この場の議論はそれで終了した。 同日 同時刻 海鳴市 八神家 「いや、明日の朝に入ることにする。」 シグナムはそういって風呂の勧めを断り、リビングルームに残った。 「今日の戦闘か?」 「聡いな、その通りだ。テスタロッサと言う魔導師に、あの傀儡兵・・・」 上着と長袖を捲り上げると、そこには痣ができていた。 「魔導師にしては、いいセンスをしていた。良い師に学んだのだろうな。武器が違ったならどうなったか・・・ それにお前達は見ていなかっただろうが、あの傀儡兵には妙な機能がついていた。」 「妙な機能?」 「完全に決まったと思われた攻撃がギリギリで見えない壁のようなものに防がれた。 しかもご丁寧にそれを使って逆襲してきた。」 「大型の傀儡兵に装備されているバリア機能ではないのか?」 「違う、通常のやつは防御一辺倒のものだ。あれは明らかに攻撃の機能も備わっている。 それに恐らくあれは管理局の物ではない、ヴィータの話では警告なしで攻撃してきた聞く。 管理局なら質量兵器は使わない上に攻撃する前に決まり文句を必ず言う。」 あごに手を当て考え込むシグナム 管理局でもないなら傀儡兵は、やはりこの世界のものか? しかし、よくニュース番組に出てくる傀儡兵―――この世界ではASというのだったか? と今日見たものは、かなり相違点があったが・・・。 「言ってなかったが、あの場所、いやあの傀儡兵から昼間に話したのと同じ臭いがした。」 ふと、ザフィーラは思い出したように言った。 「お前が言う刺激臭か?」 ああ、とザフィーラは頷いた。 この近くにやつが潜んでいるということか・・・? 「ザフィーラ、その臭いは今でもしているのか?」 「今はしない。するようになったら報告する。」 「そうか・・・今日は、もう動かないのかも知れんな。明日にでも調べるとしよう。」 シグナムは闇の書を持ち窓から外を眺め、これからどうするかという事に思いを廻らした。 同日 同時刻 時空管理局医療ブロック ずきりという痛みでなのはは目覚めた 「ここは・・・?」 辺りには見たことの無い機械が、ずらりと並んでいる。 規則正しくリズムを刻むこれは心電図だろうか? どちらにしても触らないほうがいいと判断し、しばらくぼうっとする。 (レイジング・ハート大丈夫かな?) 相棒を自らの弱さで傷つけてしまった後悔が脳裏をよぎる。 そんなことを10分ばかり考えていると部屋のドアが開き、白衣を着た男の人が入ってきた。 「おお、目が覚めたかね。どこか痛むところはあるかい?」 「ええと、肩がちょっと・・・じゃなくて、ここどこですか?」 「ここは時空管理局本部にある医療施設だよ。・・・ふーむ、肩か。」 時空管理局本部、なのはにとって初めて訪れる場所だ。 話に聞くアースラのみんなの職場である。 フェイトちゃんも今はここでお世話になってるはずだ。 「うむ。リンカーコアは、もう回復を始めているね。若いからかな?」 耳慣れない単語が出てきて、なのはは少し首を傾ける。 後で、聞いて分かったことだが魔法を使う者なら誰もが持っている魔力の源であり 魔力吸収器官でもあるらしい、自分はそれが極端に小さくなっていたそうだ。 しばらくして、検査が終わり出て行く医者と入れ替わりにフェイトちゃんが入ってきた。 「なのは、大丈夫?」 「うん、私頑丈だから・・・でも」 でも、レイジング・ハートが・・・ 「レイジング・ハートは大丈夫だよ。今、エイミィが部品を発注してる。 それに、私もバルディッシュを」 辺りになんとも言えない雰囲気が流れる。 いけない、そう思い話題を変えるなのは 「久しぶりだね、こんな再会になっちゃったけど」 フェイトは、うんと答え二人の話題はこの半年間のことに移った。 同日 同時刻 時空管理局医療ブロック休憩所 ユーノとアルフは、休憩所でジュースを買っていた。 「それにしても、あいつら何者なんだい?クロノはなんか心当たりがあったみたいだけど」 「文献で見たことがあるけど彼女達はベルカの騎士だよ。 武器の形状をしているデバイスに、あのカートリッジ・システムは間違いない。」 「ベルカって、あのベルカかい?最近になって古代技術の復元作業が進んでる、あの?」 「うん、そのベルカだよ。実の所、復元の8割は終わってミッドチルダ式との ハイブリットである近代ベルカ式も一応完成してるらしいけど 最大の特徴であるカートリッジ・システムの安全性に関するデータが揃って無いから 一般にはまだ出回ってないらしい・・・。 なんで彼女達が失われたベルカ式を使ってるのか知らないけど、とても厄介な相手だよ。 集団戦法に優れたミッドチルダ式に徐々に駆逐されていったけど1対1なら無類の強さを誇ると文献にはあった。」 ジュースを片手にアルフに相手の正体を推測するユーノ、実際に相手をして彼女達の強さは痛いほど分かる。 自分より明らかに強いなのはを倒し、フェイトを追い詰めたと言う事実だけで証拠は充分だろう。 そして一定の自負がある自分の防御魔法も危うく破られかけた。 なのはがSLBで結界を破壊してくれなければ全滅していただろう。 「なのはだけじゃなく、フェイトまで傷つけるなんて・・・!」 主とその親友が、傷つけられたことを思い出したのか ギリっと握り拳を作りアルフは近くの壁を殴る。 幸い手加減はしているらしく壁は、へこまなかったがそれでも大きな音はした。 「うわ、何?今の音。」 「なにか、すごい音がしたぞ。」 「クロノにエイミィさん・・・。どうですか?レイジング・ハートとバルディッシュは」 「フレームはひどいことになってるけど、基本構造にはダメージが及んでないから 部品交換すれば元に戻るよ。あ、ちなみに部品は来週来るみたい。 ・・・・それからフェイトちゃんは、どこ? 担当の保護観察官の人との面接の時間だから呼びに来たけど」 それを聞きアルフは急いでフェイトを呼びに行った。 保護観察官の心証を悪くしてもいい事なんて無いからだ。 同日 2156時 ギル・グレアム提督の執務室 グレアムは自分の方針を述べ、フェイトに自分との約束を守れるか聞き なのはには自分の昔話を話した。 「さて、フェイト君が約束を守ってくれると確約してくれた以上、面接は終了だよ。 そういえば、今回の事件の担当はアースラになるんだって? 現場はいろいろと面倒なことになってると聞くが」 グレアムは、なのはやフェイト後ろで控えていたクロノに尋ねる。 「はい。もう知っていると思いますが今回の事件には、あの闇の書が関わってます。 さらに現地世界の傀儡兵・・・いえASという兵器が出現しました。」 「そうか、あまり熱くなってはいけないよ。」 「大丈夫です。折り合いはもう着けましたし、提督の教えは守ります。」 クロノが部屋から出て行くと、それになのはとフェイトも続いていく。 「クロノ、ASってなのはを助けた傀儡兵のこと?」 「ああ、なのはに聞いた所によるとアーム・スレイブという人が搭乗する兵器で 第97管理外世界の各国に配備されてるらしい。」 「うん。忍さんが詳しいから知ってたけど本物を見るのは、あれが初めてだよ。」 クロノの言葉に頷く、なのは 「ASについての情報はエイミィたちが収集してくれてる。 現実問題は第1級捜索指定ロストロギア『闇の書』についてだ。」 「『闇の書』?」 なのはとフェイトは同時に聞き返す。 「闇の書は魔力収集型のロストロギア、他人のリンカーコアを吸収してページを埋めていく。 666ページがすべて埋まったら完成するというものだ。」 「完成すると、どうなるの?」 「少なくともいいことだけは起きない。」 とだけクロノは答えた。 12月3日 1007時 海鳴市 市立図書館前 ザフィーラの散歩ついでに、はやて、シグナム、シャマルは図書館に寄る。 ちょうど、はやても返却しなければならない本があった。 ちなみにヴィータは家でまだ寝ており、お留守番である。 「しかし、珍しいなあ。シャマルも調べ物があるって、何について調べるん?」 答え難いことを聞いてくる主に、どう答えたものか迷うシャマル 「ええと、最近ヴィータちゃんがロボットアニメに嵌っちゃって それで、この世界にもASって言うロボットがあるって言ったら興味心身で・・・ だからヴィータちゃんのために図鑑みたいなものを探してるんですよ。」 嘘は言っていない。事実、月曜日のゴールデンタイムに放送しているロボットアニメ番組をヴィータは、はやてと一緒に見ていた。 その嵌り具合を知っているはやては、なるほどと納得してしまう。 しかし、実際は昨日の戦闘に現れたASについて調べるためだ。 「では、私はしばらくザフィーラとここの周りを散歩してきます。」 図書館に動物の立ち入りは厳禁なのである。 ではなく、調べ物はシャマルに任せ散歩と称した付近の見回りをするためだ。 それに・・・・ (シグナム、例の臭いだ。) ザフィーラが、家を出る際にシグナムに警告してきた。 だが殺気の類は全くなく、主の前でもある。一応、いつでも対応できるようにしていた。 しかし監視者がいるなら情報を得る絶好の機会だ。 そうして、ザフィーラが言う臭いの中心に向かって進んでゆく。 (ここら辺だ。) 流石にここまで来れば、ほんの微かだがシグナムにも臭いを感じることができる。 辺りを見渡しても、それらしい臭いの元になるものはない。 しかし臭いと気配を感じる虚空をシグナムとザフィーラは、じっと見つめ続けた。 前へ 目次へ 次へ